映画監督 柴田剛、LomoKinoで撮る

人気バンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」の「翌日」という曲のPVはLomoKinoで撮影された17分にも及ぶ長編ムービー!この作品を監督された柴田剛さんにインタビューにお答えいただきました!このPVの裏側から、LomoKinoを楽しむためのアドバイスまで、読み応えたっぷりの内容に仕上がっています。

名前 : 柴田剛(しばたごう)
都市 : 東京都
国 : 日本
ウェブサイト : https://twitter.com/#!/shibata_go

簡単な自己紹介をお願いします。
1975年神奈川県生まれ。東京、大阪、京都、また東京と活動拠点に合わせて映画をやっています。今は東京在住です。最近は映像表現作品も多くなりました。

ロモグラフィーのカメラを以前にもご使用頂いたことはありますか?
今回が初めてです。

映像に興味を持ち始めたきっかけは何でしたか?
子どもの頃『ただの目の前のことをいちど映像イメージにした途端、何かに変わる』って発見がありました。これは何だろう? と追っかけたのが映像に興味を持ち始めたキッカケです。

LomoKinoを一言で表すと?
おもちゃの視点でフィルム映画の歴史過程を追体験できる不思議なカメラ。


今回のLomoKino作品は人気バンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」の「翌日」という曲のPVとしてご製作頂きましたが、音楽と合わせる為にどんなテーマでストーリーを作られたのでしょう?
「あらかじめ決められた恋人たちへ」というバンド名が発想の出発点です。30代のそれぞれの日常の恋愛模様をテーマにしました。ストーリーを細かく追っていくのではなく、 LomoKino の質感で11人の男女をスケッチするように撮りました。曲名にある「翌日」から汲み取ったイメージはそのまま、今日があって、昨日を思い出す今があり、そして翌日へ……っていう流れのなかの「翌日」です。

登場人物たちの日常を描いたドラマのような展開が印象的でした。キャストについてご紹介頂けませんか?
この11人の男女はバンド『あらかじめ決められた恋人たちへ』のメンバーではありませんが、でも、あらかじめ決められた恋人たち、なのです。別れた恋人たちと、これから始まる恋人たちを演じてもらいました。
キャストのみなさんはそれぞれで活躍している方ばかりです。舞台や映画、TV番組やCMで活躍されてる役者であることはもちろん、映画脚本家やカメラマンの方もいます。

この作品は約17分半と大変長い作品ですね!おそらくLomoKino史上最長ではないかと思います!何本くらい撮影されたのでしょう?
36枚撮りのフィルムを36本です。記録を作っていたとは知りませんでした。

撮影していて、印象的な出来事や、こだわった点があればお聞かせください。
フィルム1本分が十数秒のうちに撮り終わってしまうので「え! もう終わったの?」って……ワンショットが超短い撮影現場だったのが印象的でした。
だから、役者さんには毎回「スケッチされるつもりでカメラの前にいてください」と伝えていました。
デジタルではなく、フイルムで撮影しているので、8ミリカメラを回してた頃の感覚に立ち返って挑みました。

作品の中で、アナログ感のあるライトリークやほこり、粒子感をうまく使った場面が出てきましたが、絵コンテ等を書いて計算して撮影されたのですか?それとも偶然でしょうか?
失敗しない範囲で、偶然性を活かそうと思いながら作りました。フィルム画面って手ざわりの感触のものだから、そこはデジタルでは出せない映像質感を……ということを念頭において制作することは最初に決めていました。
例えば、ライトリークは現場でカメラをパカッって開けて感光させたり、カメラマンといろいろ遊びました。ホコリは、現像から返ってきたネガフィルムを自宅のスキャナーで取り込んでいく過程で思いつきました。集めたホコリをピンセットでネガのワンフレームずつに乗せてスキャンしてます。ホコリでアニメーションを作る感じですね。粒子感は何度もスキャンして試しました。撮影時の計算はなく、スキャンして作り出した映像素材を編集のタイムラインに乗せて、雰囲気に合ったものを何度も取っかえ引っかえ試してます。
それ以外に、とても重要だったことがあります。編集マンが特にこだわったところなのですが、ワンフレームずつアニメーションさせて作る映像素材のスピードを何パターンか試すことです。ワンフレームの長短を変えただけで、まったく映像素材のリズムが変わってきますから。
他にも、水滴を付けてスキャンしたり、お酢を塗って画を溶かしたり……と、色々実験しましたよ。

東京都写真美術館で上映した際に、35mmフィルム用の手回し映写機をお持ち頂き、大変驚きました!最近フィルムを使ってされていらっしゃること、教えて頂けますか?
はい。あの手回し映写機は、博物館に陳列されてる骨董品のような見た目ですが、ちゃんと上映可動できるんですよ。
TOY FILM PROJECT』という、古い映画フイルムを復元するプロジェクトに参加しています。その活動の一環として、ミュージシャンなどのライブの背景に、手回し映写機で1920年代のアニメフィルムやチャンバラフィルムなどをスクリーニングする……などのコラボレーションをしています。
手回しなのでワンフレームづつタッチをつけて上映するアナログの感覚が面白いですよ。 LomoKino の持っている、手回しで撮影する感覚と近いですね。

柴田さんは、ショッキングでシリアスな映画「おそいひと」から青春バンド映画「青空ポンチ」、はたまた地球侵略を狙う大妖怪が登場する「堀川中立売」まですごく多才なジャンルで作品を作られていますね!作品のアイデアはどんな所から生まれてくるのでしょう?
ありふれた回答になってしまいますが……アイデアは脚本家との会話の中から、もしくは日々のメモから膨らませて生まれます。普段の日常生活が映画制作と近くにある感覚です。
毎回アイデアが多様なのは、変化する活動拠点と根っこで繋がっていると感じます。

LomoKinoで作品を作る上で、参考になるアドバイス等はありますか?
時間があるなら、現像したネガフィルムを自分でスキャンして、ワンフレームづつ画を切り出して、連続写真を並べる感覚で作ったほうがいいと思います。
そして撮影には、実験心をもって挑むこと、コントロールしようとしないこと。すると面白い効果がオマケのように得られる。そのスタンスで作品を作ることが大事だと思います。
今回カメラマンがこだわっていたのは、演じるひと個人の目線の移動、目線の先に見えるもの、これをプライベートな視点で撮影することでした。 LomoKino の質感は極私的なものとの親和性がありますから、うまく活かすと記憶の断片のような効果をもたらして作品に不思議な奥行きを与えてくれます。それと逆光を積極的に取り入れてみましょう。フィルムの逆光は綺麗ですよ。

これからLomoKinoでチャレンジしたい映像作品はどんなものでしょうか?
バルブ撮影ができるのかな? もし可能なら、ワンフレームづつストップモーションで撮影して、ライトリークも勇気振り絞って大々的にとり入れる……そんな映像を作りたいです。

最後にLomoKinoをこれから使ってみようという方に何かメッセージをお願いします!(告知もあればどうぞ!)
いちどやってみると、ハマります。
「映ってる」ていう喜び、そんなフィルムならではの時間を大事に楽しんで、遊びの中から様々なワザをあみ出していくのは一興ですよ!


*インタビュー中に登場した柴田剛さんの作品

「おそいひと」
DV→35mm/color/102min/2004年
兵庫県西宮の重度の身体障害者、住田 雅清 42才。ある日、卒業論文のため に女子大生が介助者としてやってくる。それをきっかけに、住田は自分に棲む“なにか”に目覚め凶行へ突き進んで ゆく。自我の目覚めか覚醒か?“なにか”とは狂い咲いた遅い花なのか……。

あらかじめ決められた恋人たちへ「Back」MV
Hi-8→HD/color/5min/2011年

「青空ポンチ」
HD/color/102min/2008年
香川県高松を舞台に描く青春バンド コメディ。東京で夢破れて地元に U ターンしてきた青年はかつての彼女 の結婚パーティーで演奏を披露すべく、旧友や行きずりの仲間とバンドを再開する。懲りない青年はまわりの磁場を歪ませてなおも進むが……。

「堀川中立売」
HD/color/123min/2009年
京都の交差点“堀川中立売”を舞台に 繰り広げられるギャラクシーウォーズ。はみだし者たちが、サンダルで 街を練り歩く謎の人物 安倍さんに操られ、人間の顔をした妖怪たちと狂った日常を戦う。セカイの悪意との対決に終わりはあるのだろうか……。

2012-04-12 #people #movies #lomoamigo #lomokino # #go-shibata kyonn の記事

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