カイロ、イリノイ州:思いもよらないゴーストタウン

プラスチックカメラの大ファンで、ライター兼フォトグラファーのLorraine Healy。ロモグラフィーのマガジンでもすっかりお馴染みの彼女が、今度は果敢にもイリノイ州南西部にあるゴーストタウンをお気に入りの LC-A 120Sprocket Rocket で撮影してきたようです。

ミシシッピ川の堤防にある壁画。(Cairo, IL. Holga 135 bc)

私がイリノイ州にあるカイロという町の存在を知ったのは偶然のことでした。ストリートフォトグラファーの Chuck Jinesが YouTubeで、ミシシッピ川の向かいにある両極端の2つの街を紹介していたんです。一つはミズーリ州にあるケープジラルドで、魅力的な歴史をもつ繁華街でした。そして他方は、繁栄した町からゴーストタウンになったという、イリノイ州のカイロという神秘的な町だったのです。Jinesの紹介する風景に興味を持った私は、来るべく将来に備えて情報をため込んでおきました。そして遂にカイロを訪れる機会を得たのです。

(左) 古びた看板。 (右) 失われた建物の素敵なタイルの残骸。(Cairo, Illinois. LC-A 120)

シカゴからメンフィス(私の場合はイリノイ州の中心地から)まで南行していると、暗い土壌や見渡す限りのトウモロコシと大豆の畑の景色にはっきりとした変化を見ることができます。暗い土壌は赤色に代わって緑色の草に覆われた丘が広がり、空気はより湿気を帯びて人々の話し方もアメリカ南部らしい柔らかいリズムになります。イリノイ州、ミズーリ州、ケンタッキー州が合流する、オハイオ州とミシシッピ川の合流地点にカイロは位置しています。この町名はテネシー州のメンフィスとともに、強力な川で結ばれたエジプトの都市から名づけられました。

(左) 古い店の窓に反射する外の光(Pentax K1000) (右) 古い看板を掲げた窓(トリミング加工、Lomo LC-A 120)

そのような2つの大きな水路の中心にあったカイロは、南北戦争の終わりから20世紀初めにかけて商業と輸送で栄えていました。チャールズ・ディケンズも訪問したことがあり(彼はこの町に特に感銘を受けませんでしたが、この国の他の場所にもまた特に感銘を受けませんでした)、作家のマーク・トウェインは『トム・ソーヤの冒険』でジムが奴隷制から逃げ出し、ハック・フィンとともに目指した場所にこの町を設定しました(彼らは結局アーカンソー州までしか到達しませんでしたが)。全盛期にはカイロのフェリーや蒸気船網は何千もの雇用を生み、町には素敵な邸宅が建設される程の富と幸運がもたらされました。

ゴーストサイン(Cairo, Illinois. Pentax K1000)

しかし、最初にオハイオ州へ、続いてミシシッピ州へ橋が架かると、蒸気船やフェリーに代わる艀や自動車網の出現と重なり、カイロの地域経済における重要性はどんどん低くなっていきました。1920年には1万5千人を超えていた街の人口は、最近の国勢調査では僅か2千人までに急落しました。さらに、都市の衰退に加えて人種差別や確執が生じるようになりました。主要な高速道路から歴史的な地区へ車を進めると、そこにある店は僅かに数店舗が経営しているだけで、多くのレストランやガソリンスタンドの残骸をみることになるでしょう。

(1-2) カイロで営業している残り少ない店舗の一つ、バー。(Holga 135BC)/ カイロの歴史的地区にある長期間放置された美しい建物。(Holga 135BC) (3) 下の画像はロモグラフィーのSprocket Rocket で撮影した建物の細部。

建物のブロックが完全に破壊された歴史的地区は、フォトグラファーにとって撮影に夢中になれると同時に、今はなき場所への悲しみを感じる場所でもあります。私の場合、古い映画館の廃墟である「Gem」で矛盾する欲求に突き当りました。割れた窓から破壊された店内を興味深く覗き込みながら、奇跡的に無傷のその入り口にも惹かれ撮影し続けていたいと思えたのです。これまでたくさんのゴーストタウンを訪れたことがありますが、このイリノイ州のカイロほど私を惹きつける場所はありませんでした。この町はかつては重要な都市として栄えていたにも関わらず、現在は希望を失い完全に衰退していて、過去と現在の差が一番著しいところだと感じます。カイロのような町に再び過去の輝きを取り戻すことはできるのでしょうか?

(1)映画館Gemの写真(左の3枚、K1000) (2) 廃墟と化した映画館Gemの奇跡的に無傷の入り口。(Lomo LC-A 120)

カイロを出てからは主要な高速道路に戻るか、田舎道のような国道77号線を通ればミシシッピ川の側をドライブすることもできます。さて、私はどちらのコースを選んだでしょう?単純に私が地図を正しく読んでいなかったようで、道路は突然、川の側の「Tootsie’s Landing(姉さんの波止場)」と呼ばれる場所で終わってしまいました。もしも「フェリーをご利用の方は鐘を鳴らしてください」と書いた標識のついたポールと、そこに待機している2台の車がなかったなら、メンフィスへ通じる主要道路に辿り着くまで数マイル戻らなければならなかったでしょう。私は自分がミシシッピ川最果てのフェリー乗り場に辿り着いていたなんて夢にも思わなかったのです!そこに、小さな鋼のついた小さな艀(フェリー)がやってきて、待っていた数台の車が乗り込むと、北のケンタッキー州まで広大なミシシッピ川を渡っていきました。それから小さな町や郊外を通り抜けること数時間、私はテネシー州のメンフィスに辿り着きました。

(1) ミズーリ州ドレーナーの近くにあるTootsie’s Landing。ケンタッキー州のヒックマンから10台乗りのフェリーを呼ぶベルのついたポールが立っている。(Holga N) (2) ケンタッキー州ヒックマンから、イリノイ州カイロから数マイル南のミズーリ州ドレーナーまでミシシッピ川を横断している小さなフェリー。(Holga 135bc)

私が冒頭でご紹介した、カイロを知るきっかけとなったChuck Jinesのブログ記事のリンクをご紹介できなくてごめんなさい!履歴を辿ることができなくて、もう見つけられなかったんです。ですが、この場所については他にもたくさんの情報があります。カイロが現在に至るまでの歴史を辿る、Nick Jordan監督のドキュメンタリー『Between Two Rivers』の予告動画 もその一つです。


Lorraine Healy (@lorrainehealy) は太平洋岸北西部在住のアルゼンチン人ライター兼フォトグラファーです。プラスチックカメラの大ファンで、 Holgaで素敵な写真を撮るテクニックを掲載した『Tricks With A Plastic Wonder』の著者でもあります。同著は Amazon.comのeBook からもご購入いただけます。

2017-02-14 #places Lorraine Healy の記事

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