Lomo In-Depth:ミューズとしての女性の身体

2017-03-16

最近ではインターネット上でもフェミニズムや、客体化されることがどれほど男女平等を妨げているかについての議論が活発に行われています。性的対象として見られること、社会のあらゆる面での男女不平等に対する女性の主張や反対運動は目にしたことがあるはずです。ですが、女性モデルが主体もしくは客体として描かれている作品について言及するとき、私たちは本当の意味でこれを理解していると言えるでしょうか。

「男性による物語」に登場する女性の身体

このテーマの起源を辿ると、クラシックアートの時代にまで遡ります。歴史に残されなかっただけで、「20世紀になるまで女性の芸術家は存在しなかった」というのは、もはや 神話 であるとも言われています。

過去の女性芸術家の不当な扱いを別にしても、古い価値観が残る社会では女性はまた別の被害を受けています。それは性的対象として見られることです。

芸術や文学のクラシックアートでは長い間、男女のヌードが美化されてきました。男性のヌードは力、勝利、強さを象徴しています。のちに、レオナルド・ダヴィンチの有名な人体図は男性のヌードに対して、新しい先入観を提示しました。男性の描写は健康、若さ、幾何学的な美しさとされ、ルネサンス運動を通じた男性描写に大きな影響を及ぼしました。

男性のヌードはこのように美化されてきましたが、女性のヌードに対するクラシックアートの捉え方はそれとは異なるものでした。女性のヌードは繁栄と生命の誕生以外には、特定の概念を持っていませんでした。さらに、描かれる女性は彼女たちの社会的立場や男性の位置づけに依存していました。私たちは歴史のほとんどは男性によって書かれたものであることを忘れてはいけません。古典的な女性ヌードの絵画のなかにも、サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』のように大胆で自信に満ち溢れた女性の身体を描いたものもありましたが、女性の身体美は欲望の対象であるという概念が残り続けました。

後期の芸術においても、女性の姿や裸の扱いはあまり変化はありませんでした。

BrightONLINE Journal によれば、女性の身体に対する客体化や崇拝的な信仰は19世紀のビクトリア時代においてさらに称賛されたと言います。男性が性的魅力を感じる女性のウエストラインや髪の毛は、よく強調され、推奨されるようになっていました。

20世紀になると女性に対するレッテルや先入観は薄まり、女性自身であらゆる可能性に挑戦できるようになりました。少しずつではありますが、それまで男性社会とされていた環境に進出できるようになったのです。しかし、21世紀の現代においてもなおこのような話題をお話しているように、女性の社会進出はまだ十分とはいえません。女性でも男性でも、何が問題の本質なのかを理解していない人は多くいます。

写真と芸術家の場合:どのように客体化するか、もしくは「しない」か

心理学者の Martha Nussbaumは客体化を「自主性の否定、主観性の否定が含まれる。 人々の気持ちを考慮に入れず、単なる道具として扱うこと。」と定義します。これは女性からアイデンティティを取り上げ、別の文脈や物語のなかに無理やり押し込めることを意味しています。しかし、イメージが女性を性的に客体化しているかどうかをどのように証明できるでしょうか?

Credits: _haustordanielnegreiros & albeelee

The Elephant Journal はそれについて5つの可能性によって説明しています。女性を客体化することは顔を取り除くことであり、これはポートレートに特徴的です。そのようなイメージのなかには顔が全く写っていません。また、客体化は写真家やアーティストが女性の身体の特定の部分にフォーカスするときにも起こります。古典的な例では、女性の胸や腰は性的なものとして強調され、よく雑誌の表紙にも使われます。女性を客体化するときには「視覚的な距離」も問題になります。盗撮のような、被写体とカメラが離れているものがその例です。もう一つは女性がイメージのなかで力のない被写体としてポーズをとらされているときです。そして最大の問題は、女性の被写体がイメージを観た人にとって、なんの個人的なストーリーや主張も持たないマネキンになってしまうことです。

ファッション写真やエンターテイメント業界はこれに加担した点において2つの巨悪です。それはRobin Thickeのミュージックビデオ『Blurred Lines』で、単にダンスを踊っているだけの女性が文字通り「男性の喜び」として性的に客体化されていることからもわかるはずです。

Credits: hanibale

写真家は実際にモデルを知ることで、彼女たちが客体化されるのを避け自信をもって貰うことができます。モデルを物としてではなく一人の人間として扱うことで、上に挙げたような5つの可能性を排斥することができるのです。それは彼女たちの唇の色や潤い、タイトな服やスリムな身体、まるで人形のようなメイクよりもずっと大切なことです。

ヌードポートレートの撮影では、胸やお尻にフォーカスしすぎないことです。確かにそれは美しいですが、もっとモデルを尊重しなければなりません。彼女がどれほど自分の肌に自信を持っているか、彼女のヌードは彼女の性格やアイデンティティをどのように表現してくれるかなど、全身に焦点を当てる必要があります。

Credits: ug_a & johnathansanalogphotography

「女性による物語」:女性のあり方の再構築

私たちは目まぐるしい変化の時代に生きています。今日においては女性たちはこれまで以上に歴史を塗り替え、女性の客体化によって起こる障害に立ち向かおうとしています。ここで性的な客体化について多く語っているのは、それが無視できない大きな課題であるからこそなのです。

Credits: marta1901

これまで述べてきたように、メディアやさまざまな社会的場面において、女性は単なる性的欲求の対象として描かれています。時にはほんの些細なことでも、彼女たちを自身の感情や考え、本来の姿から切り離してしまうこともあります。

Credits: tomkiddo & marta1901

The Huffington Post は完璧な世界では私たちは男女関係なく、場面に応じて主体とも客体ともなるだろうと述べています。私たちがいま暮らしているような今日の社会では主体であるか客体であるかは性別に大いに左右され、時代の多数派である男性が主体となり、女性は客体化されてしまいます。

Sexual Objectification Theory によれば、女性の身体や身体の一部が彼女の人格と切り離され、男性の性的欲求の物理的な対象とみなされると、摂食障害やうつ病などの精神の健康問題を引き起こす可能性があると言及されています。女性が自分の身体を受け入れ、自信を持つことはますます困難になっています。

Photos by Jessica M.Kirk

客体化の数ある副作用の一つは、メディアが完璧なスタイルと顔の理想的な女性像を作り出そうとしていることです。しかしながら、「完璧でない」ことはまったく問題ではないという考えが広まるまでにそれほど時間はかからないでしょう。実際の女性にはしわやたるみもあるし、強く美しく、常に客体化されたくはありません。幸運なことに、この課題については素晴らしい進歩を見ることができます。

多くの素晴らしい女性たちが立ち上がり、彼女たち自身の物語について語ることを決めたのです。イギリスの写真家 Francesca AllenMaisie Cousins は女性の身体と喜び、自由を表現した素晴らしい作品を制作しています。 Hollie Fernando は強いメッセージ性を持った美しい芸術作品を生み出しています。彼女は女性が本当の自分自身を受け入れる手助けをし、絵画や修正されたものではない現実の身体を表現したいと考えています。

Photos by Hollie Fernando

"自信を失うことが利益を生む社会では、自分を愛することは反逆行為です" -- Francesca Allen & Maisie Cousins

"「完璧」について間違った表現が溢れている現代では、若者が成長することはとても困難に思えます。そもそも誰が決めた「完璧」なのでしょうか? " -- Hollie Fernando

ヌードはよい働きもありますが、メディアでの扱われ方には社会にとって大きな問題があります。女性は一般的に客体として見られる側にあるのに対し、男性は見る側となっています。

"確かに社会はヌードに対してより寛容になっています。しかし、まだまだ問題は残っています。フェミニズムと身体、性を肯定的に捉える運動は悪の解体に役立っています。" --Jessica M. Kirk

Credits: daititaalexyz & marta1901

私たちは女性が自身の性的アイデンティティーに自信をもち、コントロールできるように手助けするべきです。露出の多い服は無礼もしくは誘っていると捉える人もいるから着ないようにと言うことは、彼女たちの身に何が起ころうとその服を選んだ自身にも責任があると言っていることにもなります。しかし、これは間違っています。

Photos by Kayla Varley

性別にかかわらず、また社会がこうあるべきと決めたものではなく、人間はありのままを尊重されるべきです。この世界と同じように人間も完ぺきではありませんが、だからこそ本当の自分のカラーを表現し、自身を形作るすべてを受け入れる勇敢さを持てるのです。


2017-03-16 #ニュース lomographymagazine の記事

【25周年アニバーサリー限定エディション】Lomography生誕25周年記念として Lomo LC-Aシリーズのカメラが限定デザインで登場!ブラウンの本革に25周年アニバーサリーのロゴが入ったスペシャルなエディションです。オンラインショップまたは直営店Lomography+にて販売中。限定生産なのでお早めにどうぞ!

コメントはまだありません

他の記事を読む

  • Petzval 85 Art Lensで光と遊ぶ:写真家 Audrey Kwok

    2017-06-29 #people crissyrobles の記事
    Petzval 85 Art Lensで光と遊ぶ:写真家 Audrey Kwok

    学校の写真のクラスがきっかけで情熱が芽生え、それが彼女のキャリアを切り拓いたと語る写真家の Audrey Kwok。シンガポールを拠点として活動する彼女の作品は、フレームの中でいまにも叫び出しそうな鮮やかな色が特徴的。今回彼女は Petzval 85 Art Lens でボケが織りなす美しい作品を撮影してくれました。

    2017-06-29
  • 虹色の思い出:Wendy Laurelのフィルムスープ実験

    2017-08-27 #tutorials lomographymagazine の記事
    虹色の思い出:Wendy Laurelのフィルムスープ実験

    旅行中の家族写真で実験をしてみたという Wendy Laurel。彼女は旅の幸せな思い出を表現するため、酸性のフィルムスープや光漏れで素敵なイメージを作り上げました!今回は、実験の内容や手順について私たちに教えてくれました。ハッピーな気持ちが伝染しそうな写真とともにご覧ください。

    2017-08-27
  • 虹色のパレット: Laurence Philomeneによる「ノンバイナリー」ポートレート

    2017-05-08 #people Ciel Hernandez の記事
    虹色のパレット: Laurence Philomeneによる「ノンバイナリー」ポートレート

    赤と緑、ピンクと青、白と黒でもない。現実にははっきりとした境界線などなく、グラデーションのようにすべては曖昧です。モントリオールを拠点に活動する写真家Laurence Philomeneの「ノンバイナリー」シリーズのポートレートは私たちに物事の新しい見方を与えてくれます。*《ノンバイナリージェンダー》は男性にも女性にも分類されない性別自認のこと。

    2017-05-08
  • ショップニュース

    あなたの大切なひと時を円形に閉じ込めて...

    あなたの大切なひと時を円形に閉じ込めて...

    170度の魚眼レンズで見る世界。いつもよりも、より一層愛らしく!動物の顔をアップで撮影して、デカ鼻のユニークな写真も面白い!

  • Lomo LC-A+の魅力とは?

    2018-02-02 #gear Lomography の記事
    Lomo LC-A+の魅力とは?

    長年にわたりたくさんの人々に愛されてきたフィルムカメラ Lomo LC-A+。このカメラのどこがそんなにいいの?と思う人もいるかもしれません。でも、LC-A+の写す世界を見れば一目で理由がわかるでしょう。この小さななボディには、クリエイティブな可能性がぎっしり詰まっているんです。

    2018-02-02
  • 若き女性フォトグラファー Marine Toux: Analogue Women

    2017-03-08 #people mpflawer の記事
    若き女性フォトグラファー Marine Toux: Analogue Women

    Marine Toux は若きフランス人女性フォトグラファー。そんな彼女を国際女性デーに紹介できて私たちもとっても嬉しいです!フェミニズムに対する考え方や、写真の世界で女性として生きていくことについて語ってくれました。

    2017-03-08
  • 家族のためのアルバム:Nancy Borowick

    2017-05-09 #people lomographymagazine の記事
    家族のためのアルバム:Nancy Borowick

    アメリカのフォトジャーナリストNancy Borowickは両親がステージ5の癌と診断されて以来、家族の想い出を写真に残し続けています。「この瞬間を永遠に刻む」という写真本来の目的のもとで、写真家としてではなく家族として彼女は両親にレンズを向けます。

    2017-05-09
  • ショップニュース

    ロモグラフィックな写りを簡単に楽しめる!

    ロモグラフィックな写りを簡単に楽しめる!

    【ロモグラフィーの Simple Use Film Camera(レンズ付フィルム)】さあ今すぐ撮影開始!ロモグラフィーのユニークなフィルムでの撮影を簡単に楽しめます。フィルムが既にセットされているので、購入したらすぐに撮影スタート可能。

  • Daguerreotype Achromatの第一印象:Kamal Tung

    2017-05-01 #gear #people Jill Tan Radovan の記事
    Daguerreotype Achromatの第一印象:Kamal Tung

    フィルム写真が希少とされる今日においては、モノクロのイメージは携帯画面をスワイプすればすぐに出来上がってしまうと思われがちですが、そんななかでもKamal Yungの作品を真実を写し続けています。シンガポールを拠点に活動する彼はいまでも静物画やポートレートを古典的な方法、フィルムで写すことを選びます。

    2017-05-01
  • Lubitel 166+で焦点のあったクローズアップ写真を撮る裏技!

    2017-05-15 #gear #tutorials sandravo の記事
    Lubitel 166+で焦点のあったクローズアップ写真を撮る裏技!

    ご存知の通り二眼レフの可愛い見た目と多様な機能が魅力的なLubitel 166+ですが、一つ弱点があります。それは、最短焦点距離です。普段は80cmでも十分に事足りますが、時にはもっと近寄って撮影したい場合もあります。そんな時はクローズアップフィルターを使うのが簡単な解決策ですが、この場合にはフォーカスを目測で推測しなければなりません。ですが、もうそんな心配はいりません!!今回ご紹介する方法を使えば、クローズアップフィルターを使ってもビューファインダーでフォーカスの確認ができちゃうんです!

    2017-05-15
  • 冬の木々に魅せられて

    2018-02-19 #tutorials hodachrome の記事
    冬の木々に魅せられて

    葉が落ちて枝の形があらわになった冬の木々…、冬の寒さや物哀しさを感じさせるシンボリックな光景のひとつですが、皆さんは写真に撮ったりしますか?色が乏しく素材としては難しいのですが、アイデアや技術、そしてロモグラフィーの個性的なフィルムを駆使することで面白い写真を撮ることができます。今回はそれらを紹介していきたいと思います。

    2018-02-19
  • ショップニュース

    ファインダーを覗くだけでも楽しい!軽量二眼レフカメラ

    ファインダーを覗くだけでも楽しい!軽量二眼レフカメラ

    Lubitel 166+での撮影はとても実験的。上から覗き込むタイプのウエストレベルファインダーを使って思う通りにフレーミングできます。120フィルムと35mmフィルムが両方使えるので、飽きずに創作意欲も存分に湧き上がることでしょう。あなたもロモグラフィーのオンラインショップでLubitel 166+を手に入れて、アナログ写真の代表作を作りましょう!

  • アナログプリントと東京の街 :写真家 あしだち なお

    2017-11-18 refallinsasaki の記事
    アナログプリントと東京の街 :写真家 あしだち なお

    東京の街で様々な青年たちの姿を切りとった写真集 "boys in tokyo sentimental" は、写真家の あしだち なお さんによるもの。写真に写る青年たちだけではなく、それぞれの街の個性が捉えられていたのが印象的でした。アナログプリントや紙の写真が大好きだと語る彼女は、先日紙にまつわるイベント『Paper Bazaar』を開催したばかり。今日はそんな彼女に、アナログ写真の魅力について語っていただきました!

    2017-11-18
  • 果実と変人:LomoAmigo Eva Zar

    2017-03-14 #culture #people #places Katherine Phipps の記事
    果実と変人:LomoAmigo Eva Zar

    アーティストでありフォトグラファーのEva ZarはSNSに投稿された写真からは感じることのできない、親密で壊れやすい瞬間を探求します。彼女の風変わりで気まぐれなスタイルはヨーロッパとニューヨークいずれにおいても雑誌社やブランドからの注目を集めています。今回は彼女にLomoAmigoとしてLomo'Instant Wideによる作品をご紹介して頂きました!

    2017-03-14
  • Simple Use Film Camera『ordinary unordinary days』 エキシビション @ Lomography+

    2017-04-27 refallinsasaki の記事
    Simple Use Film Camera『ordinary unordinary days』 エキシビション @ Lomography+

    Simple Use Film Camera の発売を記念して、『ordinary unordinary days』エキシビションが Lomography+にて開催決定。ロモグラフィースタッフが独断と偏見で選んだ個性を持つ8人。年齢も、やっていることも、ビジョンも…何もかもが異なる彼らが Simple Use Film Cameraで写した写真が飾られます。《写真》というフィルターを通じて世界はどのように写っているのか?[展示] を見に来るというよりも、友達の家に遊びに来て壁一面にある写真を眺めるような感覚で、ぜひエキシビションにお越しください。

    2017-04-27