なぜZINEをつくるのか?


昔、写真は高価で複雑なものでした。そのため、より手軽に楽しめるよう改良が進められました。でも、思い出が写真という形あるものに変化する感覚が懐かしく思えます。今回は印刷した写真を自費出版をすることの目的や、その意義について考えていきたいと思います。

Zine by Kamal Tung from Flickr Commons; Zine by Colin Dunn from Flickr Commons; American Analog zine from Flickr Commons

プリントすることの魅力

フィルムカメラが主流だった時代は、スマートフォンやデジタルカメラのようにすぐに結果を確認することはできませんでした(フィルムユーザーにとっては今も同様ですね)。フィルム1本につき24枚か36枚撮り終わってやっと、現像所に持っていきます。現像所によっては当日現像・プリントが可能であったり、状況によって数日間を要したりします。撮影した日から写真を確認するまで何日も経ってやっと、プリントされた写真を受け取ることができるのです。写真を手にした瞬間、「これで思い出が形あるものになって存在するんだ。」というあたたかい気持ちに包まれます。現代では写真をプリントするということが減りましたが、ZINEメーカーであり、写真家でもあるJess Farranは、写真はプリントをして、形あるものにすることに意味があると語ります。

"写真はプリントすることで初めて、意味が生まれるの。昔は、写真を確認するためにはネガからプリントするしかなかった。でも今は液晶ディスプレイ上で確認するばかりだから、写真をプリントするということはむしろ革命的なんじゃないかって思う。写真は印刷されるべきだし、私は印刷された写真が好きよ。"

より早く、手軽に、面倒な手順を省くというのが一般的な技術の進歩と言えますが、同時に素晴らしい何かを見落とすことになっているかもしれません。昨今、思い出はプリントよりもピクセルとして .jpg やRAWファイルとして手軽に残し、同じくらい手軽に捨てることができます。しかし、昔ながらの手順を踏んで、そのプロセスを楽しむ人々がいるのもまた事実。私たちは自費出版を通じて、 プリントレス文化 を少し変えることができると思っています。

Photos from Lean Lui, Julija Svetlova and Tom Blunt from Flickr Commons

アイディアの出し方について

私たちは、写真を印刷し形あるものにした上で再構成することによって、より豊かな表現をすることができると考えています。DIYの本やZINEがここ数年でまた増え始めています。多くのフィルムフォトグラファーが写真をプリントして、ZINEという形で自分の作品を表現しているのです。Jessはこれまで手がけたZINEからコツを見出し、最新であり彼女にとって3冊目のZINE、 HABIBI を作り上げました。ZINEは、写真のコンセプトやテーマをまとめたもの。写真、フォント、紙、その全てで表現し、彼女の人生そのものを明らかにしています。彼女にとってZINEを作ることは面倒な作業ではありません。写真を撮って、その中から選ぶだけ、と非常にシンプルです。InDesignを使って写真をレイアウトし、そのまま印刷にかけます。

"いつも作り上げてからそのZINEのコンセプトに気がつくの。無意識にまとめた写真を解釈しながら作っていく。まるでアートセラピーみたい。なぜZINEをつくっているのかという目的を打破するためにも、完璧は求めないようにしてるのよ。"

一方でロモグラファーのJulija Svetlovaは、Blurbという独立出版社向けのプラットホームを使っています。Blurbはハイクオリティな写真集を1部単位から作成することができます。Julijaの初めての写真集はHolgaで撮影されたものでした。そこから世界中へ出かけた際の旅行記など、次々に作成していきました。A Point of View Vol. 2: Hautes-Pyrénées + Pais Basque はパノラマ写真を使った旅エッセイです。彼女にとって写真集は、思い出や経験、アートを共有するための一つの手段なのです。

"旅するごとに写真集を作りたいと思っているけれど、まだまだ実現できていないわ。写真集を誰かに見せることは、パソコンやスマートフォンの画面をスクロールして写真を見てもらうよりもっと満足感があるの。紙にはなにか不思議な魅力があるから、写真集を作るときは紙もこだわるようにしているわ。"
A Point of View Vol. 2: Hautes-Pyrénées + Pais Basque from Julija Svetlova

直感を信じる

Julijaはロモグラフィーのコミュニティーメンバーと意見を交換し合い、写真集の作成以外にも様々なことに挑戦しています。

"ただ写真を印刷するだけでも、本でも、興味を持ったらまずは作ってみてもらいたいな。私はアパートの壁を自分の写真で埋め尽くしているわ。ほどんど多重露光した写真よ。フレームをつけたり工夫したり、いろいろな方法で飾っているわ。この写真の壁を見る度、とっても楽しい気持ちになるの。だからみんなにもぜひ試してほしいわ。困ったらなんでも聞いてね。"

初めてZINEを作る人に向けて、利益を求めるものではなく、アーティストとしての自分のために作るべきだとJessは語ります。

"販売することを目的として作ることはオススメしないわ。誰かが欲しがるようなものを作ろうと意識しすぎると、それは自分のクリエイティビティに誠実に作ったものとは言えない。あと、ZINEが完成するまで誰にも見せないこと。自分の個人的なものに対して、誰かの意見やアドバイスは求めていないし興味もないの。全部自分の直感に従って作るようにね。"

もちろん、制作には新しい技術を学ぶことが必要となります。プレゼンテーションやフォント、文章をよく考えましょう。ここでも時間と労力がかかると思います。使う材料によっては少し高価になるかもしれません。でも形あるものとして自分の写真を手にすることは、間違いなく価値のあることです。ちょっとずつ進んでみましょう。まずは写真を撮るところから。気に入ったものが撮れたら、印刷もしてみましょう。出版の段階にすぐに進むことはありません。急がなくても、写真はアルバムに保存できますからね。少し時間をかけて、自信が持てるようになったら、直感を信じて写真集やZINEを作りを始めましょう。

完成したら、みんなに公開して、作り上げた自分を誇りに思ってくださいね。頭の中にある構想や写真を、表現することはとっても素晴らしいことです!

Credits: emerymottjabukaeverydayhero & mikekumagai

今回のためにインタビューに答えてくれたJess Faran とJulija Svetlovaに感謝します!

2020-05-08 cielsan の記事
翻訳 erina

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