スペシャルインタビュー:東京朝市アースデイマーケット 事務局 田中利昌

代々木公園けやき並木で月一回、週末の朝に開催している東京朝市アースデイマーケット。東京の都心開催ながら本格的なファーマーズマーケットは、食と農のつながりを軸としたライフスタイル発信の場となっています。Lomography+のある3331で偶然知り合ったことがきっかけとなり、アースデイマーケットとロモグラフィー、双方がオルタナティブなライフスタイルを提供していることに共感し、事務局の田中 利昌さんにカメラをお貸出しすることになりました。マーケットの皆様のほっこりする笑顔と、なんだか温かみを感じる野菜や出品物の数々….LC-Wideで撮影された写真を、インタビューと共にお楽しみください!

田中さん、こんにちは。まずは簡単に自己紹介と、アースデイマーケットについて教えてください。

こんにちは。私はフリーランスでウェブサイトの制作とカメラマンをしています。
マーケットに関しては現在はウェブサイトの運営と当日の写真撮影をしています。
アースデイマーケットは2006年4月から始まりまして基本的に毎月1回、代々木公園のケヤキ並木で開催してきました。
以降ずっと、毎回欠かさずに撮影し続けています。マーケットがこんなに続くとは思ってもみませんでしたが、私自身も良く懲りずに続けているなぁと思います。

東京の真ん中にこれだけの農家さんのお店が並ぶなんて、普通では考えられないことですよね。アースデイマーケットはどういった経緯で始まったのでしょうか?

アースデイマーケットは NPO法人 アースデイマネー・アソシエーション の一事業として始まりました。アースデイマネーでは「r(アール)」という渋谷を中心に流通している地域通貨を運営していまして、当時rが使える場所を増やして行きたかったんですね。それなら自分たちでも市場を作っちゃおう、というのが始まりです。
地域通貨についてちょっと説明させていただくと、地域通貨というのは「円」の代わりのお金を想像してみようということです。
私たちは日ごろの生活の中で空気のように「円」を使っていますが、いちど立ち止まってお金について考えてみてもいいんじゃないですか? という提案です。お金の多い少ないはいつもみんな気にしてるんですけれど(笑)、それ自体について気を配ることってないんですよね。
個人の人生の問題についても社会の抱える大きな問題についてもお金の問題というのはかならずついて回ってきます。
自分とお金の関わりについて自分なりの考えを持つことが、社会の問題解決につながっていくと考えています。
ではなぜ農家市場だったのかというとアースデイマネーではお金の問題だけではなくて食や環境の問題も大きなテーマなんです。
テーマは大きいのですが、ともかく食べ物を作っている人と直接つながる、まずここから始めてみましょうということです。スーパーマーケットやコンビニで買い物するときは、その商品が誰がどこでどうやって作っているかに思いを馳せることはあまりしないですよね。
こんなこと言うとスーパーを否定しているように聞こえるかもしれませんがそんなことはないですよ。
別の選択肢が常にあるということを示したいんです。スーパーも農家市場もあってどちらもその時の都合で選べたらいいねということなんです。本当に豊かなことっていうのは選べることだと思います。円もドルもrも、デジタルもフィルムもということです(笑)。

食の問題というと農薬とか遺伝子組み換えとかそういう話になると思われるかもしれませんが、一番大事なことは食べて美味しいか?まずいか?です。
お金もそうですが食というものも誰もが無関係ではいられないんですよね。食べないと死んじゃいますから。だからこそ誰もが当事者になれるんです。たべて美味しい?まずい?って世代や価値観をこえて言い合えるんです。そして実は美味しいものは環境に配慮しないと作ることができないんです。

マーケットで買った野菜や米をたべると味にこれほどのストーリーがあるんだと衝撃を受けます。ストーリーというのは大げさじゃなくて、口に近づけた時の香りから、ひと噛み目から、ふた噛み目、そして喉越しに至るまで味が変化していくんです。市場に出回っている野菜の多くはとにかく柔らかくて甘くて味や食感に抑揚がありませが、それとは別世界です。
いろいろ長々と話してしまいましたが、美味しい食べ物をならべたテーブルを囲んで、自分のこと、友達のこと、社会のこと気軽に話したり考えたりできる場所があったらいいなという思いを叶えた市場を作ったということじゃないでしょうか。

東京に農場があるのをあまり見たことが無いのですが、農家さんはどこからいらしているのですか?朝早くから大変だと思いますが、農家さんはどのような思いを持って出店していらっしゃるのでしょうか?

そうですね、関東近郊、千葉、静岡、埼玉あたりが多いですね。今、一番遠い方だと山形から来られるリンゴ農家の方もいらっしゃいます。

遠くからわざわざ来られるのはやはりみなさん、お客さんとお話しして刺激を持って帰りたいんですね。お客さんと言っても一般の方だけじゃなくて、飲食店のシェフや料理研究家などいろいろな方が来場されます。また、他の農家さんとも交流をしたいというのもありますね。全国的に見れば環境に配慮した農法で農業をやっているかたは圧倒的に少数です。他の農家がどんなことをしているのかというのは興味津々だと思います。

先日、ある出店者さんがおっしゃっていたのですが「最近マーケットはいろいろあるけどアースデイマーケットが一番僕の水に合うんだよね。」と。アースデイマーケットは会場の設営や撤収作業を運営側だけでなく出店者、ボランティアスタッフみんなでやります。これはアースデイマーケットが他のマーケットにない独特な雰囲気を作ることに一役買っていると思います。

また、アースデイマーケットでは 週末農風 というボランティアグループが、援農企画(農家に手伝いに行くツアー)を担ってくれています。ある農家さんは 「東京から若い女子が草取りに大勢来てくれる!」って鼻の下を伸ばしながらおっしゃいます。鼻の下はともかく(笑)、農家にとって草取りというのは本当に辛い作業なんですね。彼らは除草剤は使いませんから。それを東京から来た若者がわーわー言いながら楽しそうに作業している光景というのは驚きなわけで、互いにとって良い交流になっているようです。

田中さんから見て、アースデイマーケットの見どころは?

まず、やっぱり野菜ですね。トマトやナスといったありきたりな野菜一つでもすごい種類があります。色・形が様々で見るだけでも楽しめます。
料理はしないよという方でも、その場で食べられるものも多数ありますのでランチがてらお越しください。あ、もちろんオーガニックのお酒やビール・ワインも取り揃えてあります。
季節ごとに旬の味わいが楽しめるので何度も来てほしいですね。
単なるお客さんで飽きたらなくなったら会場では料理教室やコーヒーの焙煎などのワークショップもやっていますのでぜひ参加してみてください。

さらにさらに、ボランティアスタッフとして、会場の設営や出店者の販売の手伝いもできます。
私のおすすめはこのボランティアに参加することです。自分の地元や職場とは別のネットワークを作る絶好の場です。ここだけの話ですが妻ともマーケットのボランティア活動を通じて知り合いました。

アースデイマーケットには、ボランティアのカメラ部もあり、田中さんも長い間マーケットの様子を撮影し続けて来ていると聞きました。田中さんはどうしてマーケットの写真を撮り続けているのでしょうか?

最初はとにかく撮る人が誰もいなかったんですね。マーケットの広報のためにも撮影は絶対必要なわけですが誰も撮る人がいない。じゃあ撮ろうかなと。そんな感じでした。実は当時の私はカメラマンでも何でもなく、それまで写真を意識して撮ったこともありませんでした。

撮影を続けるうちに、マーケットは本当に魅力的な場所だと思い知りました。商品や出店者のみなさんは言うまでもなく、渋谷と原宿をつなぐ通り道という場所柄、通行人も老若男女、人種もさまざま、格好もいろいろ、地域のお神輿やデモ行進などイベントも事欠かず、ケヤキ並木も季節に応じて、新緑から紅葉、葉が落ちた後は青い空が大きく広がります。毎月撮影していても新しい発見や出会いが必ずあります。
そうこうしているうちに、写真の腕も上がったのかちらほら依頼を受けるようになってカメラマンを名乗るようになりました。

撮る理由というか、結局私自身の生き方にとってアースデイマーケットは必要な場所なんだと思います。私は大学卒業後、特定の組織に属するような生き方はしてこなかったのですが、そうは言っても実際一人で生きていけるわけではありません。
そんな私にとってアースデイマーケットは人との出会いの場であったり、アイデアを具現化する場であったり、技術を磨く場であったり、営業の場であったり、息抜きの場であったり、この通り、ちょっと替えのきかない場所になってしまっていますね。
そして、こんな良い場所をもっと皆さんに利用してほしい!と思っています。
昨年、 アースデイマーケット写真部 を作りました。
これはまさしく、写真好きの方々ともっと一緒に活動したい!という思いで作りました。こんなに魅力的な場所があるよ!と、マーケットにとっても外から新たな視点が入ってくることは大歓迎です。写真が好きな方々って独特な目の付け所をお持ちですからね。
そして、ここでロモさんと出会ってしまったわけですね。
お話してきたように私は昔からの写真好きという訳じゃなかったので、フィルムカメラは経験がありませんでした。前回のマーケットでロモさんの LC-Wide を使ったのが、初めてのフィルムでの撮影です。
あらかじめテスト撮影する時間がなくぶっつけ本番で出来上がりが心配でしたが面白い絵が撮れましたね。今回は二重露光とハーフサイズでの組写真を意識して撮るというのをテーマに臨んだのですが二重露光は想像以上に痛快でした。
「フォトショップ使えばなんでもできるじゃん!」というのがありますよね。でもね、後でなんとでもできるという発想が現場での集中力を殺していたんだなとつくづく感じました。出来上がりもその場じゃわかりませんよね? 現像が上がってくるまでの数日間がちょっとの不安と大きな期待を噛みしめる時間になりました。
今後もフィルムカメラでマーケットの撮影を続けたいと思います。まだ内緒ですがロモさんとのコラボ企画も思いついてしまいましたしね。

ずばり、アースデイマーケットを今後どのような場所にして行きたいですか?

アースデイマーケットでは農家市場を基本としつつ、今後もさまざまな体験ができる場としてやっていきたいですね。それもロモさんのような外部の方と一緒にやりたいですね。私たちだけでできることは知れていますので。どんな提案でも大歓迎です。
今回、ロモさんにフィルムカメラに触れるチャンスを頂いてより一層、写真の楽しみが広がりました。私自身、いままでもフィルムに興味はあったのですが手が出せずにいたんですね。実際に体験できる機会というのは大切だと再確認しました。
まずは、アースデイマーケットの場でしかできない形で、デジタルもよいけれどフィルムも面白いよ!という提案をロモさんとやりますのでどうぞご期待ください。

田中さん、インタビューに答えていただきありがとうございました。皆様もおいしい農作物と出店者さんの温かい笑顔を味わいに、是非アースデイマーケットに足を運んでみてください!

東京朝市アースデイマーケット

2015年 開催予定

  • 03月28日(土)、29日(日) 10:00〜16:00 雨天決行( BEERNISTA TOKYO と同時開催)
  • 04月26日(日) 10:00〜16:00 雨天決行
  • 05月24日(日) 10:00〜16:00 雨天決行

2015-03-19 #people #lifestyle #lomoamigo ciscoswank の記事

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