LomoAmigo: Paul Del Rosario、Belairで撮る

Paul Del Rosarioは日本で24年間活動を続けているサンフランシスコ出身の写真家。外国人があまり目にすることの無い東京の裏側に着目し、ありのままの混沌としたダーティーな素顔をモノクロ写真に写し込みます。彼は120 loveというファッションブランドにも所属しており、フィルム写真の精神をストリートカルチャーに浸透させる活動をしています。

Photo by Paul Del Rosario

Name: Paul Del Rosario
Location: Tokyo
Camera: Belair X 6-12 City Slicker
Web: www.pauldelrosario.com

こんにちはPaul!まずは自己紹介をお願いします。

僕はサンフランシスコ出身だけど、1991年からずっと日本で活動しています。10代の頃に写真に惹かれて、僕の人生において欠かせないものになったんだ。今まで写真や映像制作(特に8mm)について少しでも考えなかった日はなかったよ。8mmは最近僕の興味をそそる新しいカメラレンズだね。昔はスタジオポートレイトをよく撮影していたけど、今では都市の景観撮影にこの身を捧げているよ。

どのように写真を学んで、なぜフィルムで撮影することを選んだのですか?

フォトジャーナリストとして、写真のプロフェッショナルになりたくて高校で写真を選考したんだ。でも正直にいうと僕はその道に進む勇気が足りなかったんだ。高校卒業後に写真学校に通おうか考えたんだけど、でもその時は僕には「現実味」が足りないように感じたんだ。

現在、僕は日本の写真家・ 金村修 さんに師事しています。彼は僕にどのようにして写真撮影のルールやガイドラインを気にせずに撮影するのかを教えてくれました。写真だけに限ったことではないのだけれど、建築仏やグラフィックデザインでも、僕はずっと型にはまらない物事に興味があった。だから金村さんのように究極の視覚的チャンネルを働かせる人と一緒に活動することは僕の抽象的な部分を広げるのにとても役に立ったんだ。

僕はフィルムと一緒に成長をし、そして未だに中判フィルムから「卒業」出来ずにいる。もし僕が独自のスタイルで実質的なものを生み出すことができたら、そのとき初めてフィルムを理解することになるだろうし、次に何に挑戦するのか決めることになるだろうね。

Photo by Paul Del Rosario

120 LOVE について教えてください。

中判フィルム写真の特別なものを他の人とファッションやライフスタイルを通して共有したいと思ったんだ。スポーツやストリートカルチャーなどのアクティビティーからファッションブランドは作られるものだから、それらの代わりに写真がその位置に就くべきだと考えた。そしてそこから120 LOVEは誕生したんだ。カメラを首からぶらさげていなくても、写真を楽しめるんだ。

日本では、「6x6」のことを「ロクロク」と言う。Tシャツにビジュアルとして「ロクロク」、「シックスバイシックス」が現れること、その「ロクロク」の言葉自体が少し風変わりで面白いと感じたんだ。このTシャツのデザインを見た時に、殆どの人が数学の方程式だと思うだろうね。でも写真が好きな人なら自然と本当の意味が理解できるし、自分が写真好きだと気づく。そしてこの「写真言語」を理解出来る人に出会える喜びもある。120 LOVEはまだ新しいブランドだけれど、僕はこの小さなベンチャーを通してアナログ文化を讃えたいんだ。

Photo by Paul Del Rosario

あなたのスタイルと主義を教えてください。

「trash(ごみ、ガラクタ)」がもしジャンルだったら、僕はカメラと共にその中にいるだろうね。具体的に言うと、僕は東京の混沌とした部分を撮影するのが好きなんだ。そういうガイドブックに載っていない、ありきたりの日本ではない場所を写すんだ。僕が日本で生活をしていて楽しんでいることのひとつが昭和の遺物の写真写りの良さなんだ。電線が無造作に伸びていて、都市部の象徴的な建物と衝突するように共存する様子は、何の規則も無くそれぞれが積み重なっているように感じる。僕は幼少時代を少し日本で過ごしたので、そういった昭和的な景観にノスタルジーを感じるんだ。ファンキーな60年代、70年代の美学を保持した現代の商店街と同じようにね。

でもスナップを撮る為に東京のスナップ撮影をしたくないんだ。僕は視覚的なゆがみや東京の変なところを撮り、皆が見たがらない世界を見せて上げたいんです。

暴力的で奇妙なもののシティースケープの撮影はオーガニックでアナログなワークフローと相伴って行われる。アナログな処理は、数字で確立で考えても、デジタルで撮影するより問題が生じやすい。最初にフィルムをカメラに装填することから、暗室でプリントするまで、ずっと失敗はつきものだけれど、僕はこのワークフローが好きなんだ。ライトリーク、薬品の温度の変動、ホコリ、ネガの曲がった跡など、フィルムで撮影し、クリエイティブなプロセスを踏むからこそ生じる結果や、予測していなかったことが起こるのが楽しいんだ。

Photo by Paul Del Rosario

コンタクトプリントもお見せしてくれてありがとうございます。どうしてコンタクトプリントを特別に感じるのですか?

僕は10代の頃から長年自分で現像をしているけど、いまだに素晴らしいプロセスだと感じている。フィルムを自分で現像して、コンタクトプリントで初めて結果を見るとき、その用紙はまるで自分の写真スキルを写し出す鏡となるんだ。暗室ではいつでもクリスマスプレゼントを開封するときの様な経験ができる。コンタクトプリントには、ソフトウェアで作り出される「ウソ」はない。覆い焼きやバーニング処理などのプリントの際の加工技術も使えない。全てはコンタクトシートが写し出される前に決定していて、コンタクトシートで結果を見て、触れることができる。僕はコンタクトプリントをテーブルの上に置いて、ルーペでみたり、赤ペンでレビューを記入する触感をとても楽しんでいるんだ。最近はコンタクトシートを見ることも少なくなったけれど、僕はコンタクトシートで過去にしがみついている。

Photo by Paul Del Rosario

Belairカメラでの撮影はいかがでしたか?このカメラのどんなところが好きですか?

最初にロモグラフィーのBelairを見たとき、そのフォームにすごく関心したんだ。僕は蛇腹カメラが好きでね。Belairは軽くてコンパクトで、隠された強みもあった。
中判カメラの蛇腹をオープンするときは、まるでクラシックカーに乗って出発の準備が出来た時と同じ力を感じるんだ。そして、このカメラでは3種類のフォーマットで撮影できるから、幅広い撮影に対応してる。

そして僕が個人的に好きなところは、Belairカメラには異なったスタイルで撮影出来るようにレンズやマスクなどのたくさんのアクセサリーがあること。そして技術的なことをあまり考えなくても良いシンプルな操作性も。僕がBelairを使った時は、単純に撮影距離を無限に設定して、絞りとカメラポジション、その2つを調節しただけだ。この2つで光加減と写真の構成をするからね。たったそれだけ。ホワイトバランスも、シャッター速度も、オートフォーカスかマニュアルフォーカスかなど、余計なことも考えなくて良いんだ。カメラをポイントに向けて、ただ撮るだけ。液晶画面をみることよりも、フォトグラファーとして必要なことをするだけだ。

Belairカメラで撮影した写真について教えてください。

Belairで撮った写真はどれも僕の過激な主義、「目が泳ぐ余地はない」という、僕が東京で感じる感覚に則ったものだね。物が多すぎて何を見れば良いのかわからないんだ。たとえあなたが見たくなくても、どこからともなく視野に入って、従わなければならないというシステムはないんだ。

Belairの写真は性質が異なる物同士が激突している。例えば、電信柱が桜の木と建物の壁をまっぷたつに分けている写真、焼き肉屋の広告が建物の壁に不躾に割り込んでいる写真、油でベトベトな換気ダクトがレストランの正面に位置している写真(そのお店に入ろうと思っても、なんか美味しそうに感じない配置だろうね…)など、狭い東京で隠しきれずに目に入ってくるものを写したんだ。東京にはそういう美しさがある。それでも東京には建物は立ち続けるし、人々もそういった状態でもおかまいなしにやってくる。それが東京だ。

僕はこういった写真を撮るときはいつも6x7を使っている。だからBelairで撮影する時は6x9のフレームに細工して、写る範囲を狭めて撮影したよ。そういった遊びができて、面白いカメラなんだ。

これらの写真は、ちょうどそのとき御徒町と浅草橋にいたからそこで撮影したんだ。でもこういったイメージは日本の大都市ならどこでも見つかる光景だよ。

Photo by Paul Del Rosario

Paul、インタビューにお答えいただきありがとうございました!


2015-05-13 #people #lomoamigo ciscoswank の記事
翻訳 ciscoswank

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