フィルムカメラブーム再来の謎に迫る

技術の進歩にともない、世界は発展を余儀なくされます。しかし、懐かしさやノスタルジーといった感情も必ず存在するものです。Kindleのような便利な電子書籍が主要となってきた現代でも、紙媒体の書籍が残っていることがその証拠です。そしてカメラフィルムも、SDカードに代わって再び写真を撮る人々の間でブームとなっています。

ここでは21世紀のフィルムの歴史を遡り、ブーム再来の謎に迫ります。

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デジタル時代の到来とアナログの衰退

2000年には、徐々にフィルムカメラからデジタルカメラへの移行が進んでいました。もちろん当初はほとんどの人にとって高額で手の届かないものでしたが、デジタルメディアとその市場競争の発展に伴い、2010年にはプロ、アマチュア、一般の愛好者に関わらずカメラユーザーの多くがデジタルカメラに移行しました。

デジタルカメラは以前よりも手に入りやすい価格で、使いやすいものになりました。そのクオリティはフィルムカメラ愛好者でさえ否定することはできなかったでしょう。デジタルカメラの登場によって、もはや写真の現像を待つ必要はなくなりました。失敗した写真はすぐに消去できますし、急に撮影したい時にフィルム切れということもありません。デジタルカメラは時間とお金、労力を削減し、さらに携帯電話にハイスペックのカメラが搭載されるようになるとその傾向は一層強まりました。

そのような背景から、フィルムやアナログカメラはアンティークとなったのです。

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デジタルカメラがもたらした変化

手頃で使いやすく、かつ実用的なデジタルカメラは写真の撮影方法やカメラ利用者の行動を変えました。写真を撮る機会は広がり、「絞り」「シャッタースピード」「感度」などカメラの知識を学ばなくても、誰でも簡単に良い写真が撮れるようになりました。

BBC のライターであるTom de Castellaはこう語ります。

「デジタルカメラの登場によって公共の場での人々の態度は変わった。最近ではレストランで食事をする人は寿司でもピザでも、料理が届くと携帯で写真を撮って記録に残そうとする。20年前では友人に夕食の写真を見せるなんて考えられなかっただろう。デジタルカメラがもたらした一番の変化はコンサートやスポーツ大会での振る舞いである。コンサートに行けばカメラを高く構える腕の大群に出会うし、フットボールの試合を観に行けばゴール後やキックオフのときに幾千ものフラッシュを浴びるだろう。」

時代はまさにデジタルの黄金期で、誰もがデジタルカメラによる手軽で完璧な写真の虜になっていました。
しかし、人々は次第にその完璧さに飽き始めたのです。

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新時代の到来:デジタルの衰退とフィルムの復活

子供がおもちゃに飽きてしまうように、それが何であっても人はいつか飽きてしまいます。そしてデジタルカメラもその例外ではありませんでした。デジタルカメラで撮影された完璧な写真に対して、多くの人がどれも普通でつまらないと感じるようになり始めています。簡単に完璧なものが撮れるようになったことで、その魅力と価値はなくなってしまったのです。

そんなとき、どうすればいいでしょう?長い歴史のなかで、人々は別の新しいなにかを始めることでそのような事態を打開してきました。

そしていま、デジタルで育った若者たちのアナログへの移行が始まっています。 Artsy のMolly Gottschalkは次のように言います。

「今日ではデジタル技術の進歩によって我々にできることの幅は広がり、またより多くの人がそれをできるようになりました。しかし、その偽りの完全性はいまにも崩れようとしています。この変化は写真界でも起こっています。アナログからデジタルへの移行はリアリズムと確実性を重視する社会運動を巻き起こし、現在でもデジタルカメラの利用者は増え続けています。しかし、iphoneやタッチパネルのアプリで育った若い世代のフォトグラファーたちはそういった最新技術を離れ、だんだんとフィルムカメラに移行しつつあります。デジタルよりも遅く、使うのが難しいけれど、それこそがバーチャルな刺激とデジタルのイメージに晒されてきた若い世代の求めているものなのです。」

また、フィルムはファッションフォトグラファーの間でもブームとなっています。 Business of Fashion によれば Petapixel の最近の調査ではフィルム市場は、特にコダック、富士フイルム、イルフォード、 LomographyのPurple XR のようなフィルムにおいて売上の増加をみせているそうです。さらに、近年では インスタントカメラ も人気を集めています。

新たな経験や価値が見出せるものとして、フィルムの未来は輝いているのです。


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2016-10-25 #文化 Ciel Hernandez の記事

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