Lomo In-Depth: セルフセラピーとしての芸術と写真

悩みやうつ病を和らげるための手段として、自己表現が有効であることは多くのアーティストによって証明されてきました。そして他の芸術と同じく写真もまた、人々が頼るストレス解消の手段の一つです。この記事では、写真が人の精神安定にどのように貢献してくれるのか、謎に包まれたその癒しの力を解き明かしていきます。

Credits: kasperhouser

芸術家の精神状態

まずは芸術とセルフセラピーにどのような関係があるのかお話ししましょう。

「苦悩する芸術家」のステレオタイプとして、ゴッホを思い浮かべる方が多いかもしれません。彼は一例に過ぎませんが、芸術家がうつ病や精神病にかかりやすい可能性は否定できません。

Kari Steffansonの 創造性と精神病をつなぐ遺伝学 における研究では、創造性とうつ病には関係性があると言及されています。

Kari Steffansonは The Guardian でのインタビューで次のように語っています。

『クリエイティブであるためには、人と違う考え方をしなければならない。そして、人と違っていると、「変わり者」、「狂人」、そしてときには「頭がおかしい」などとレッテルを張られることも多くなる』。

これを読んでいる多くの人にとって、素晴らしい写真家であるということは同時に素晴らしい芸術家であることを意味しているでしょう。そして、芸術家であるということは、「他人と違っている」ことでもあります。他人と異なることは常にテーマ一つですが、同時に芸術家は「変わっている」、「おかしい」というレッテルを貼られることもあるでしょう。

そしておそらく、これがすべての苦しみのもとなのでしょう。自分だけが変わり者で、世界の外にいるような孤独感は、芸術の分野においてはクリエティビティを刺激することもあります。しかし、それは個人的な幸福とはまた別問題であり、心の健康に良いとは言えません。

Credits: grazieheyfrida & clownshoes

一方で、ハーバードの精神医学教授である Albert Rothenbergは、創造性が人を狂わせるという説を否定しています。抑圧された環境で自己表現ができなかったり、想像力を発揮できないことが根本的な原因と考えるようです。

Allan Rothenbergは The Guardian のインタビューで次のように答えています。

『芸術家が社会から孤立し、自分の内側にいる悪魔と戦っているという考えは、19世紀のロマンチックな概念です。ほぼすべての精神病院では芸術療法が利用されており、患者の多くは芸術的な分野に惹きつけられます。』

セルフセラピーとしての写真

カメラは私たちが裸眼では見ることや理解することのできないものを知るための義眼として働きます。知覚は常に主観的であるため、私たちは大きな景色のなかにある小さなことや意識の向いていないものを見落としがちです。カメラはその風景を捉え、私たちが気づかないようなことにも焦点を向ける手助けとなります。人生を変えてしまうような体験や真実は、そのような細部に潜んでいることもあります。

Credits: mikeluntzilla

実際、写真家のなかにはプロとして写真に情熱を捧げるようになる前は、芸術をヒーリングの方法としていたと話す人も多くいます。

『写真は人生の美しさを再発見させてくれることで、あなたの魂を癒してくれると思います。特に日常生活の中にある美しさの発見においてです。それに、写真は人に自信を与えてくれます。芸術を作り出し、人と共有し、評価を受けることへの自信です。私にとって写真は創造力の捌け口ともなりました。写真を始める前は、自分の創造力を表現するものが何もなかったんです。私は(これを読んでいる他の多くの人と同じように)芸術家として生まれましたが、絵を描く才能には恵まれませんでした。写真との出会いは、私に世界のユニークな捉えた方と、より世界と繋がっている感覚を与えてくれたのです。』-- Eric Kim, C-Heads
『写真は僕にとってセラピーなんだ。これまで知らなかった方法で、自分の感情をコントロールできるようにしてくれたからね。』-- Christian Hopkins, Flickr Blog
「私のカメラは、これまで理解できるなんて思っていなかったような世界を私に見せてくれるんです。それに気づいたとき、私の心のなかの歯車が同時に動き始めたのを感じました。」-- Katie Eleanor, ロモグラフィーでのインタビュー

Huffington Post によれば、写真というメディアを利用できる人は、それを自己流で学んだか専門的な教育を受けたかに関係なく、より容易に自己表現をできるようになるといわれています。

さぁ、悩みを抱えている人は今すぐに絵筆やペン、カメラを持って探検に出かけましょう!もうカメラを持っているという方は、いつも通り撮り続けてくださいね。


2017-02-01 #文化 Ciel Hernandez の記事

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