John Voulgarakisが写したアテネの街並み

ギリシャのフォトグラファー・ John Voulgarakis はきっと前世でも写真に関わっていたに違いありません。プロのフォトグラファー、考古学の写真家、カメラワークショップの講師を務めながら、彼はいまだに「学習者」であるといいます。このインタビューでは、彼はLC-Aに対する情熱とギリシャの危機が芸術シーンに及ぼす影響を語り、そして愛するアテネの街並みを案内してくれました。

© John Voulgarakis

こんにちは、John!簡単な自己紹介をお願いできますか?

こんにちは。今回はこのような機会をいただき有難うございます。私の名前はJohn、もしくはギリシャ語ではYannisといって、パルテノン宮殿で有名なアテネを拠点とするフォトグラファーです。永遠に夢中になれる趣味を職業にできて、自分は本当に幸運な人間だと思います。1997年以来、私は生活のために様々な「被写体」を撮影してきましたが、同時に自分自身や感情をアート写真によって表現するために、生活のドキュメントや光学的な「言語」を用いた写真にも挑戦してきました。この作業は、一方ではプロとして、もう一方では芸術作品の基盤を作ろうとしながら今でも続けています。そして、それは写真というメディアへの想いを他の人に伝えるという魅力的な願いにも気づかせてくれました。難しく聞こえるかもしれませんが、ものすごく簡単に言えば、私はLeicaユーザーであり熱狂的なロモグラファーでもあるんです。

© John Voulgarakis

写真を始めたきっかけはなんですか?

高校を卒業後、私はグラフィックアートを学びました。しかし、コースを修了してみると、コンピューターの前での作業は退屈で私には向いていませんでした。当時、履修していた授業で一番面白かったのが写真だったんです。私はどこかに出かけたり、新しい人に会ったりするのが好きで、瞬間を大切に生きるタイプの人間なんです。それから、お気に入りの中古バイクを売ったお金で買ったカメラを使って、その一瞬の時間を写真として永遠に残すことを覚えました。フィルムを何本も使って撮影し始めて、 André Kertész の言葉を借りると、「 いいものが現れるようになりました( something good started to come out )」。その後、私の写真をみた親友の一人が知人でアシスタントを探していた素晴らしいフォトグラファーのことを教えてくれたんです。そこで働きはじめたときは、たくさんの秘密や宝の隠された魔法の部屋に繋がる扉が無数にある、巨大なファンタジーハウスに迷い込んだかのようでした。このような芸術や技術の広大な宇宙へ挑戦しようとする者にとっては、人生はとても短いものだと思い知らされました。私は今ではこのファンタジーハウスを「家」とよび、彷徨い歩き続けています。

お気に入りのカメラはなんですか?

LC-A 、LC-A、LC-A!小さいもの、大きいもの、ワイドなもの、狭いもの。私はこのシリーズのカメラを4台持っていて、35㎜フィルムのものが3台と120が1台あります。目立たず直感的で街の中やどんな状況であっても私が望むイメージを写してくれる、この「ブラックボックス」が大好きなんです。この小さな「子犬」はいつでもどこでも持ち運べて、レンズを被写体に向けたら焦点距離を推測してシャッターを押すだけです。露出はカメラに任せれば自動で計算してくれるので、何も考える必要がありません。カメラによる露光調整は素晴らしい色や雰囲気、感情を映し出してくれます。このカメラは時を超える夢のようなマシーンなのです。

© John Voulgarakis

「Everyday Athens(アテネの毎日)」と呼ばれるシリーズ作品がありますね。ストリート写真はあなたに影響を与えますか?

もちろんです。素晴らしいストリート写真で私の作品に影響を与えてくれた写真家、アートの巨匠はたくさんいます。また、私はカメラを持って街を散歩することも好きなんです。それは内容を知らないまま演劇を観に行くことにも似ています。物語が進むにつれてすべてが明らかになっていきますが、そこには無限の可能性があり、あなた自身もそれを想像するチャンスがあります。「Everyday Athens」はありふれた日常は特別なものだということを思い返させてくれるシリーズなんです。少なくとも人生はね。

© John Voulgarakis

ギリシャにおけるフォトグラファーとしての活動はいかがですか?この国の芸術シーンについてお聞かせいただけますか?

どこにいてもフォトグラファーとしての仕事に変わりはないと信じています。写真は世界共通言語で、境界のない光学コミュニケーションなんです。「百聞は一見にしかず」という有名な諺は、複雑なアイディアもたった一枚のイメージで伝えることができ、モノの写真はその意味や要素を言葉による説明よりも効果的に表現できると述べています。いま現在、ギリシャはたった一つの言葉に支配されています。それは「危機」です。経済危機、難民危機、社会危機、あらゆるところに危機が蔓延し、芸術シーンも例外ではありません。写真が立ち向かい、そして写しているメインテーマもまた危機です。人々のあり方、戦争の波及、イデオロギー、宗教、政治の影響。これらも写真家にとって現在進行形の議論の「文脈」となっています。私の考えでは、この環境はギリシャの近現代アートに創造的刺激を与え、この国は芸術家にとって現実とフィクションがどのように混ざり合い、現代の生活がいかに「空虚」に感じることがあるかを追求する上で興味深い場所になったと思います。

撮影は計画を立てて行いますか、それともなるべく自然に近い状態で撮影しますか?

頭のなかに思い描いたイメージを写すために必要であればどちらでも、もしくはその他の方法でも撮影します。被写体やそのときの自分の気持ちにもよりますね。プロジェクトへのアプローチの方法は事前に考えておいて、もしもそれが「機能」しなかった場合には他の方法に変更するでしょう。結局は永遠に模索し続けているので、その時どうするのか今はわかりません。ただやるだけです。

© John Voulgarakis

あなたは考古学の写真家としても働いていたそうですね。被写体が人間か無生物であるかによって撮影に違いはありますか?

この質問に対しては、スターウォーズのジェダイのような回答になってしまいますね。写真はあらゆる生き物を繋ぐ力を持っているんです。そして私の場合、それは無生物にも有効です。エコーは永遠に残っているんです。もちろん被写体に応じて違うカメラを使ったり、機材を追加したり、ライトニングやテクニックを変えたり、写真家として異なるアプローチをすることもありますが、私は生命の繋がりをどこにいてもどんなものに対しても感じます。たとえば、15世紀の原稿を撮影している場合、それを紙・皮・インクなどからできた単なる人工物と感じているようでは良いアプローチはできないと思います。それを最初に創造した人、手にした人、読んだ人々のエネルギーを保存し伝えるものであると理解する必要があるのです。現存するすべてのものは、それが持つ知識を私たちに伝えてくれます。つまり、撮影するものが何かに関わらず、ただ被写体を感じて繋がるだけのことなのです。

今後のご予定は?

これまで何度か取り組んできた新しいプロジェクトを進めていて、それを編集して物語にまとめる時が来たと考えています。実はもう動き始めているんです。それと、2017年の終わりには写真集の紹介も兼ねてこのシリーズの展覧会を企画したいと考えているので、ギャラリーやアートスペースにも働きかけています。最後に、ロモグラフィーギリシャとの 「Analogue Dreamers Exhibition 」(リンク先英語)でのコラボの成功もあったので、2017年も今度はインスタントカメラを使って彼らとなにか一緒に出来ればいいなと考えていて、 Lomo'Instant を使った企画を進めているところなんです。

© John Voulgarakis

あなたは写真の講師もしていますね。写真を始めたばかりの人へ、一番大切なアドバイスはなんですか?

デジタル技術は生活を便利にしてくれます。現代のカメラでは私たちが求める以上のことが可能となりました。カメラマンに左右されず、カメラさえあれば写真を撮ることができてしまうんです。ですが、それは本当の意味での写真とはいえません。一日中私たちを監視している、街中に設置された高性能カメラもまた写真ではありません。私たちには自分が何を撮影しているのか理解し、感じるためのインスピレーションが必要なのです。写真のイメージのなかに余分なピクセルは一つもありません。写真を撮るのはカメラマンであり、カメラはただそれを実行するだけです。より良いフォトグラファー、より良い人間になるためには、惜しみない努力と時間が必要です。


記事内の写真はすべてJohnの許可を得て掲載しています。彼の作品をもっと観てみたい方は ホームページ もしくは Facebook もチェックしてみてください!

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