Tristan Aitchison × LC-Wide:North Coast 500を横断する旅の記録

Tristan Aitchisonはイギリスを拠点とする映画監督、写真家です。今回、彼はスコットランド高地の最北を横断する500マイルの旅をLC-Wideで記録してくれました!この美しい場所で彼が出会った丘やビーチ、風景を写真を通じて一緒に発見しましょう!

Photos: Tristan Aitchison

それは23日の金曜日だった。― スコットランド北部を旅する6日間のロードトリップで一晩目に予約したB&Bのオーナーはこう言った。 「もしここまで到着できそうになければ電話してください」。窓の外をみると外はまだ吹雪いている。私は頑なにこう答えた。 「なんとか辿り着いてみせるよ」と。

ロモグラフィーから伝説的なLC-A+の超広角バージョンである LC-Wide のレビューを頼まれたとき、私はすぐにNorth Coast 500のことに思い至りました。それはイギリス本土から最も遠い、スコットランドの北にある高地を巡る500マイルの壮大な旅で、私の人生の目標の一つでもありました。この旅はCNNによって世界のロードトリップでトップ10の一つに位置付けられています。私がこの旅行を実現するためには世界中を旅したり、アマゾン川を渡ったり、モンゴルの牧草で発酵した牝馬のミルクを飲んだりする必要はありません。ただ最後まで運転を続けて、13日の金曜日、雪が道を凍結させる前にMackenzie婦人のB&Bに辿り着ければいいだけだったのです。

Photos: Tristan Aitchison

旅の第一歩は東方のBlack Isleの端にある自分の家から西海岸にあるLochcarronまで向かうことでした。旅はまだ始まってもいなかったし、公式な旅の出発地であり終点であるInvernessにすらたどり着けそうにありませんでした。言い訳が許されるなら、ロモグラフィーのゴールデン10ルールの10番目にこんなのがあります。 「ルールを気にしないこと!他人の言うことなんて聞くことはありません。真実をあなた自身の中に残して、あなたの内なるロモグラフィックな声に従いましょう」。 私の理想のロードトリップはオープントップの車、映画『テルマ&ルイーズ』、そしてバックミラーに写るまだ若い頃のBrad Pittの瞳です。現実の世界では私は韓国産SUVのハンドルを握りしめ、冬の吹雪のなかをフロントガラスを眺めながら時速30マイルで走っていました。 西海岸とLochcarronに近づくと天気は変わって雲が開け、ポストカードのような景色が現れました。

NC500を旅する人の多くはバイクやキャンピングカー、レンタルスポーツカーでほぼ一方通行の道がホーチミンのようにいっぱいになる、もっと快適な夏の日に出かけるでしょう。1月の初めにこのルートを走るということは、ヨーロッパ最後の真の荒野ともいわれる開けた道を一人きりで何マイルも進まなければならないことを意味していました。
日の出が午前9時、日の入りが午後4時で日中に500マイルすべてをドライブするためには慎重な計画が必要です。ですが、この時期なら道が混雑することはありません。

Mackenzie婦人のためにEdithにお別れをいって、私はいまや最初のステップであるLochinverへ続く海岸線にいました。この周辺は西部へ出かけたときの家族旅行で良く知っている道でした。まだ子供だった当時は、ボルボの後部座席に詰め込まれて曲がりくねった道を進んだり、濡れたスパニエルとバーバージャケットの匂いで胸がむかいたりしていたのはいい想い出ではありませんでしたが、大人になってみるとこれほど素晴らしい場所はありません。絶え間なく変わる天候とともに変化する美しく荘厳な山々は西大西洋を圧巻しています。光の差し方が変わると泥炭の汚れた黒い穴は周囲の絶景を反射する銀色の鏡に姿を変えます。

高地はその美しさはもちろん、観光客好みのタータンやウィスキー、お城などでも評判です。高地の出身であれば自分の故郷については観光客とは違う視点を抱くでしょう。そこに住む人々は地形と天候から逃れることができません。その残酷さは何世紀にも渡ってその土地と人々との関係性を作り上げていて、この歴史は高地に住む人の魂にも刻み込まれています。壊れた壁や荒れ果てた農地の側を通り過ぎると、自然と人の戦いは自然が勝者のように思えるかもしれません。ですが、真実はより複雑なのです。

Photos: Tristan Aitchison

北方の高地はヨーロッパでもっとも人口がまばらな地域の一つですが、昔からそうだったわけではありません。かつては寂しい渓谷にゲール語を話す農家がテナントとして入っており、小さな農地でなんとか生計を立てていました。1770年から1850年代にはこれらのコミュニティーは強制的に土地と家屋を奪われました。裕福な土地の所有者は人よりも羊のほうが利益になると考えたのです。ウールはイギリス帝国が他国へ進撃する際のユニフォームを作るために南へ送られました。浮浪の民族のなかには十分な体力のない者を置いてアメリカやカナダ、ニュージーランドへと危険な冒険に旅立つものもいました。取り残されたものは荒れ果てた不毛な土地に残るほかなく、何度も生活を立て直そうと挑戦しては挫折を繰り返しました。ハイランドクリアランスとして知られているこの悲惨なスコットランドの歴史は、いまでは現代の民族浄化の第一の行為として非難されています。

ドライブを一休みしてLochinveの近くにある オールドマンオブストー という60メートルの海食柱へと潮風を浴びながらハイキングに出かけました。北大西洋のパワーがこの砂岩を打ち砕いたのかと考えると、本当に感動的な大スペクタクルでした。特にモノクロで観るこの風景はとても気に入っています。重い雲が大地を覆い、雨は降っていないのに地面は湿っています。孤独に聳えるオールドマンオブストーのシルエットには哀愁がありどこかミステリアスです。私が高地を好きな理由の一つは、簡単にあるがままの自分になれるからなんです。その日その風景をみたのは私ただ一人だけでした。

Photos: Tristan Aitchison

Assyntを通って北へ向かう旅に戻りましょう。 道中はすべてのコーナーを曲がるたびに、壮大な景色に頬をぶたれているような気持ちでした。 それは力強く頑丈で、まるで世界の終わりのようでした。 素敵なロードトリップにはサウンドトラックが不可欠ですが、今回の場合はJeff WayneのWar of The Worldsでしょう。この見たことの無いような地形を過ぎると、70年代のエイリアンの新劇や人類の破壊行為を彷彿とさせるような景色が現れました。その光景をみたとき、ロモグラフィーの別のワイドアングルカメラである Sprocket Rocket を使って自分自身のロモウォールのトリビュートを作ろうと思いつきました。

5日目は北海岸のビーチや岬を探検しました。この付近の湾や洞窟は世界で最も潮流の速い海峡の一つであるペントランド海峡の流れから避難してくるシャチの群れの避難所ともなっています。最終日はまたロモグラフィーのゴールデンルールの10に従い、NC500のオフィシャルな道を逸れて旅を続けました。Invernessまで東海岸を下る代わりに、Strathnaverを通って陸地の方面に向かいました。かつてコミュニティが住んでいたこの幽谷は、残酷で無慈悲な民俗浄化で悪名高いものです。 その歴史はいまだに空気中に残っており、特にRosalの荒廃した村ではその痛ましさが感じられます。

Photos: Tristan Aitchison

家に繋がる最後の直線道路に入ったころには、この500マイルを終わらせてしまいたくありませんでした。いまでは雪は山頂付近にしか降っていません。私は過去の旅、トランスシベリア鉄道やインド亜大陸を横断したときのことを思い出していました。今回のNC500の旅はそれらを上回っていたかもしれません。自分の故郷でこのような経験をできたことをとても誇りに思っています。

Photos: Tristan Aitchison

Tristan Aitchison はスコットランドの高地出身の映像作家です。彼が撮影したケニアのトランスジェンダー、インターセックスコミュニティのドキュメンタリー 『Sidney & Friends』 は2017年の夏に国際映画祭で公開予定です。掲載画像は LC-Wide と Fomapan 200 で撮影し Kodak D76 1+1 で自家現像したものと、 Lomography Sprocket Rocket と DIYでレッドスケールにした Agfa Vista 200 Redscale 、 Lomography Color Negative 400 で撮影したものです。

2017-05-06 #ニュース

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