コーヒー現像をはじめよう!

モノクロフィルムの現像は案外簡単できちゃいます。使う材料はなんとインスタントコーヒー!化学実験みたいな気持ちで、モノクロ写真を自分で現像しちゃいましょう。

Credits: erina

そもそも現像とは?

通常は現像屋さんに出しますね。一体どのような作業をしているのでしょう。

  1. まず撮影済みフィルムを「現像液」という薬品で処理をし、像を浮かび上がらせる
  2. その後これ以上現像が進まないように「停止液」という薬品で処理
  3. その像を「定着液」という薬品で定着
  4. 洗浄してしっかり乾燥させたらカットして終了!

以上3種類の薬品を使って処理を行うことで、皆さんが手にするネガが仕上がります。この薬品はいずれも水道に流してはいけない環境に悪い液体として規定されており、捨てるためには業者さんにお願いして回収してもらう必要があります。

ちょっと億劫だなあと感じてしまったかもしれませんね。でもご安心を。「現像液」はインスタントコーヒーを使った手作りの薬品で代用できます!「停止液」は用意しなくても現像はできますよ。少しハードルが下がりましたでしょうか。それでは早速現像方法を見てみましょう!

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コーヒー現像をしよう!

コーヒー現像は "Caffenol" と言われ、様々な人が現像チャートをネット上にアップしています。
その中でも今回はビタミンCを使用するCaffenol-Cという現像方法で、私がいつも使っているレシピをご紹介。

用意するもの

現像するにあたり必ず必要なものが「現像タンク」です。家電量販店などで新品も購入可能。インターネットなどで中古品も手に入れられますよ。これがあればお家に暗室がなくても現像することができます。

今回はプラスチック製600mlサイズのものを使用。120は1本、35mmは2本同時に処理可能。この他ステンレス製もありますが、プラスチック製の方が簡単です。

・空きペットボトル2本
・定着液 今回は富士フィルムスーパーフジフィックスを使用
・スケール
・じょうご
・計量カップ 
・温度計
・インスタントコーヒー(粉状のもの。とびきり安いものでOKです。ドリップしたコーヒーは使えません。)
・粉状のビタミンC(薬局などで手に入ります。純粋なビタミンCのみのものが望ましい。錠剤を砕いて使うこともできますが、溶けにくいので粉がオススメです。)
・セスキ炭酸ソーダ(100円ショップなどで手に入ります。)
・タイマー(携帯電話などでOK)

あったら便利なものが、この「ダークバック」という簡易暗室のようなアイテム。新品で3000円ほど。光に当てて感光しないように、この中でフィルムを現像タンクに移します。(ダークバックを買う前、私は部屋を真っ暗にし、お布団の中で作業していました。しかし十分注意が必要なのでオススメはできません…!)

袋状になっており、手さぐりで作業する簡易暗室です。

現像液のレシピ

600mlタンク用 (35mm 2本まで or 120 1本)
・インスタントコーヒー 27g
・ビタミンC 10g
・セスキ炭酸ソーダ 14g
粉の分量は少ないより多い方が良いです。ちょっとくらい入れすぎちゃってもOKですよ。

材料の準備できたら早速現像を始めましよう!

現像方法

現像は1時間あれば仕上がります。

1. 現像液を作る

  1. 空きペットボトルにインスタントコーヒーとビタミンC、熱湯100mlを入れ、十分に溶かす。ペットボトルを優しく振れば簡単。
  2. セスキ炭酸ソーダを追加。泡が立ってちょっとへんなにおいがしますが、気にせず水500mlを入れてしっかり溶かす。
  3. 温度が20℃になるまで冷蔵庫で冷やす。
スケールに乗せながら粉を計量すると手軽です。

2.定着液を作る

使用する定着液の説明に基づき、定着液の原液をを水で希釈して定着液を作ります。今回使うスーパーフジフィックスの場合は、水2:原液1です。今回は600ml分作るので、水400mlと原液200mlをペットボトルに入れ、混ぜて準備完了です。

3. フィルムを現像タンクにセットする

現像液を冷やしている間に、フィルムを現像タンクにセットしましょう。

※ここからはダークバックの中での作業です。説明では明るいところで作業していますが、フィルムを光に当ててダメにしないようくれぐれも注意してくださいね。

120フィルムの場合

120フィルムはフィルムが台紙の紙と重なってロールになっています。この台紙からはがしてフィルムのみリールに巻いていきます。なるべく表面は触らず、フィルムに指紋がつかないように気をつけます。

黒い紙が台紙。半透明のものがフィルム。

リールの端が丸い方を奥にしてフィルムの先端を差し込み、左右交互にリールを回すことでフィルムが巻き込まれていきます。フィルムの最後もテープで台紙に貼られていますが、剥がしたり、折り込むなどして適当に始末します。

※ダークバックの中での作業

フィルムをセットできたらリールを芯棒に差し込み、芯棒の出っ張りがある方を下にして現像タンクに入れます。内蓋をしっかりしめたらセット完了。ダークバックから出して、光に当てても大丈夫です!

芯棒の出っ張りがある方を下にしてセット。 ※ダークバックの中での作業

35mm フィルムの場合

まずはフィルムの先端を取り出します。「フィルムピッカー」があれば簡単ですが、なければ現像済みのネガを使って取り出すこともできます。(参考記事: フィルムピッカーなしでキャニスターからフィルムを引き出す方法

セット方法は120フィルムと同じです。ダークバックの中で全て巻き取ったら最後はハサミで切って巻き切ります。フィルムの本数が1本の場合も、リールは2個芯棒にセットした方が、安定して現像できました。(スタッフ経験談)

4.現像処理

フィルムセット完了、現像液の温度も20℃になったらいよいよ処理を始めましょう。現像の流れは【現像液→すすぎ→定着液→すすぎ→乾燥】の順番です。

現像時間

ISO100の場合
現像:20分
定着:7分

ISO400の場合
現像:28分
定着:7分

上記はあくまで目安です。最後の「処理液の使用期間」の項目でもお話ししますが、何度か使った液を使用する場合は処理時間を1,2分伸ばしましょう。まずはこれで試して、他のレシピを参考にしたり、自分の好きな仕上がりになる時間をさがしてみてくださいね。

それでは早速、現像処理を始めます!

【現像】

1)現像液を投入。外蓋をしっかりしめて、タンクを上下にひっくり返しながら混ぜます。最初の1分間は手を止めずに混ぜ続けましょう。そこまで素早く頑張らなくて大丈夫です。激しく混ぜて気泡がフィルムについてしまうと、現像ムラの原因となってしまう可能性があります。穏やかに。

このタンクの場合は撹拌用の棒が付いているので、くるくると棒を回すだけで撹拌ができます。

2)1分間混ぜたら手を止め、放置。1分間タンクを動かさないようにします。

3)1分間放置したら今度は10回くらいタンクを混ぜ、再度1分間放置...
つまり、 「1分間放置、1分経ったら10回混ぜる」 を規定の現像時間繰り返します。

【すすぎ】
現像時間分終了したら現像液をすすぐ作業に移ります。ペットボトルにじょうごを使って現像液を戻し入れ、水が透明になるまでタンク内をすすぎます。※まだ内蓋を開けないように。

【定着】
定着液を入れたら、現像液と同様に、最初の1分は混ぜ続け、次から1分ごとに休憩と10回混ぜるを繰り返します。

【すすぎ】
定着時間が終了したら空ペットボトルに定着液を戻し、フィルムをしっかりとすすぎましょう。

4回ほど水を入れ替え、しっかりすすげたらいよいよフィルムとどきどきのご対面。蓋を開けてリールの水気をしっかりととり、フィルムを取り外しましょう。写真は無事現像できていましたか?

【乾燥】
フィルムの安否を確認したら乾燥させます。ハンガーなどに洗濯ばさみやクリップでとめ、先端部分も重石としてクリップなどで止めます。(跡がつく可能性があるため、像が出ているところは挟まないようにしてください。)フィルムの先端部分をつまみ、フィルムを揺らして極限まで水気を飛ばしたら、しっかり乾燥させます。これで現像処理は終了です!お疲れ様でした!

スキャンについて

データ化するにあたり、ネガを「フィルムスキャナー」でスキャンします。フィルムスキャナーは大きく分けて2種類あります。

①フィルム専用スキャナー
35mmのみに対応したものが多いです。PCがなくても直接SDカードなどに保存することができます。
②フラットヘッドスキャナー
やや値ははるものの、様々なフィルムタイプに対応、フィルム以外もスキャン可能など、高機能です。

またはお店にスキャンのみをお願いしたり、スキャンアプリも登場しているようですので試してみては。

処理液の使用期間

現像液
だいたい3、4回は使用可能。しかし作成後数日以内に使用しましよう。現像の効果がなくなってしまいます。私は撮りためたフィルムをまとめて現像したり、原材料が安いので都度新しく作り新鮮な現像液で処理しています。

定着液
こちらもだいたい3、4回は使用可能。ただし、回数を重ねるごとに処理時間を1, 2分のばすと安心です。
また、使用可否の確認方法があります!ダークバックの中で現像前のフィルムの端っこを少しだけカットして、定着液に入れます。7〜10分ほどでフィルムが透明になったらまだ使用できるサインです。

フィルムをちょこっとだけ切って浸けてみましょう

現像のコツ

  • 現像液の粉はしっかり撹拌して溶かすこと。液にムラがあるとネガに現像ムラがでてしまったり、傷がついてしまったりします。
  • 温度はなるべく守りましょう。万が一液が冷えすぎてしまった場合は、現像時間を伸ばすなど、調整しましょう。
  • 現像後フィルムを乾燥させる際に水気が多く残っていると、水滴の跡がついてしまう場合があります。その時はクリーナーで拭いたり、メガネ拭きなどで優しく拭き取りましょう。またムラなく乾燥させるための「水切り剤」も販売されています。スポンジで水気を拭き取る方法もありますが、フィルムを傷つけないよう注意が必要です。
左上の丸い模様が水滴の跡が残っている様子。白い筋はホコリか傷です。

通常の現像と何が違うの?

通常の現像液を使った現像と何が違うのか、ご説明します。

メリット

  • 材料が身近なものでできる
  • 現像液の処理に困らない

デメリット

  • 通常の現像液を使用するよりも、仕上がりが少々暗い
    そのため、撮影時にオーバー気味(明るめ)に撮影することをオススメします。LC-A+などを使う際は、ISO400のフィルムを使うときにカメラの感度をISO100に設定するだけでも大丈夫です。マニュアル設定のカメラの場合、シャッタースピードを少し遅くしたり、絞りをやや大きく(f値の数字を小さく)してみましょう。
  • 通常の現像液を使用するよりも、時間がかかる

以上が大きな違いと言えるでしょう。共通して言えることは、現像屋さんにお願いするより場合によっては安く早い、ということですね。何より「現像をする」ということが楽しいので、ぜひチャレンジしてみてくださいね!

注意事項

・今回ご紹介したのはインスタントコーヒーを使った現像のあくまで一例です。成功をお約束するものではありません。大事なフィルムは何本か練習してから現像を行うか、現像所に出してくださいね。
・定着液などの廃液の処理には細心の注意を払い、最新の情報を収集してください。
・使用する材料の量は現像タンクの容量によって異なります。使用する現像タンクに応じて、薬品量を調整してください。

便利なタイマーアプリもあります。"Develop"など英語でも検索してみてくださいね。


参考記事

▶︎アナログでやりたいことリスト:3月 - コーヒー現像
▶︎Lady Grey B&W 400 フィルムの自家現像時間チャート

2020-02-07 erina の記事

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