第三世界 : クマガイユウヤ

LomoChrome Metropolis を使用したことのある方は、このフィルムが単なる特殊な発色をするものではないということに既にお気付きでしょう。セピアのように色褪せた発色をする一方で、カラーフィルムのように豊かな色彩感を持ち合わせているだけでなく、時にモノクロのような世界を映し出す。ファインダーを覗けばそこには、あなただけの第三世界が広がることでしょう。

日本の各地でシャッターを切ってきて、まずこのフィルムに感じた印象は、写真を見返したときに懐かしくもあり、非現実的な気分になったということです。シャッターを切ったのは私なのですが、まるで知らない場所を撮影したような感覚で、とても興味深いと感じました。フィルムの発色を初めて見たときに、これは単なる黄色に寄っている特殊フィルムではないことに気づきました。何かが欠けているわけでもなく、何かが主張しすぎているわけでもない、新しいカラーフィルムだと私は考えました。

面白がってこのフィルムを何本か使っていくと、この新しいカラーフィルムの多様な表情に気付かされます。太陽の光が強く、影が濃くなるようなシチュエーションではモノクロ写真の様な陰影を映しだし、シャッタースピードをいつもより少し遅くすることでコントラストの深さを増してカラー写真のような力強さを表現したり、無機物の生々しさや美しさを繊細に冷静に映しだしたり、ポートレートでは肌の陰影を上手に表現してくれるので、温度感さえも感じさせてくれます。一見冷淡な描写を得意としそうなメトロポリスは、まさにMetropolitanのもつ人間らしさを表しているかのようです。

それらの表情は、Metropolisから離れた自然豊かな地域での撮影でも発揮され、非常に興味深いです。山々の緑、水面の変化、空の青、木々の茶色、全てがそれぞれ見たことない表情をします。
Chromeシリーズ は独自の発色をするフィルムですが、このMetropolis は新世代のカラーフィルムといっても過言ではないくらいに表情豊かで個性を持っていて、それでいてキャッチ―な使用感。これほどに実験的でそれでいて普遍的なフィルムは現代においてそうあるものではありません。このフィルムでよく表される言葉であるノスタルジック、確かにその通りだと思います。しかし、ノスタルジックなのはこのフィルムが紡ぐあなたの物語の序章に過ぎないのです。

この新しいフィルムと共に、まだ見ぬあなたの第三世界を覗いてみませんか?
共にフィルム新世代を生きましょう。


クマガイユウヤ (from THE NAAV)
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過去インタビュー記事
▶︎人間らしさを捉えて:クマガイユウヤ with LC-A+
▶︎雨をすり抜けて:クマガイユウヤ with Petzval 80.5
▶︎超低感度モノクロフィルムとの向き合い方:クマガイユウヤ
▶︎HydroChromeの第一印象:クマガイユウヤ
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2022-02-14

LomoChrome Metropolis 35 mm ISO 100–400

イエローやグリーンの発色、低い彩度と力強いコントラストが特徴のロモグラフィーオリジナル35mmフィルム

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