覚えのない景色 ー写真という素材ー:田中綾子インタビュー
1 Share Tweet写真を撮るとき私たちはしばし、今見えている光景をとどめるためにシャッターを切ります。しかし、田中綾子さんa.k.a @tanaka_ayako0727 はファインダーをほぼ覗かず「自分自身が意図的に切り取った景色ではなく、自分から遠ざかってどこかへ流れてしまう景色を記録するため」にシャッターを切ります。そして写真は写真のみで完結するのでしょうか?今回紹介する田中さんは自分の作品を Simple Use Film Camera と LomoChrome Metropolis を駆使して撮影をし、写真として完結させるのではなく、そこから立体作品へとさらに展開させてゆきます。我々の見慣れた写真というメディアに彼女は新たな視点を加えてくれるでしょう。


田中さんこんにちは!少し自己紹介をお願いします。
私は「偽物の情景」をテーマに主に立体作品を制作しています。
写真作品としてではなく、写真を一つの素材として扱っています。
アートの世界に踏み込んだきっかけは何ですか?そして写真と出会い、このような作品のスタイルに至った経緯はどのようなものですか?
きっかけは中学生の頃に美術品の保存修復士という仕事を知ったことです。その頃は作家になるつもりはなくて、ただ美術に関わりながら生きていきたいとは考えていました。そこから東京藝術大学の彫刻科に入学し、大学院に進学してから写真を扱い始めました。記憶の捏造や、自分自身と他者の記憶の境界、過ぎ去った時間の行方に思いを巡らせ、それらを「偽物の情景」として制作のテーマとしています。写真の持つ記録としての機能とテーマとの繋がりを感じ、使用しはじめました。

田中さんの作品に使われている写真は、ロモグラフィーのフィルムやSimple Use Film Cameraが使われているそうですね。ロモグラフィーに出会ったのはいつですか?
大学院生の頃です。友人が写真を撮っていて、ロモグラフィーを教えてもらったことがきっかけです。
写真を撮るときに意識していることはありますか?または、今の撮影方法になったきっかけはありますか?
現在はほぼファインダーを覗かずに撮影をしています。作品に使用する写真を選ぶ際に「自分自身がその景色を鮮明に覚えていないこと」を重視しているためです。自分自身が意図的に切り取った景色ではなく、自分から遠ざかってどこかへ流れてしまう景色を記録するために、そのような撮影方法をとるようになりました。
今回の展示でのテーマはどのようなものですか?
今回は「今日」というタイトルで展示を行いました。極めて個人的な、局所的な時間に焦点をあてることで、むしろ自分自身と他者の記憶の境界の曖昧さが浮かび上がってくるのではないかと考えました。
田中さんの作品では色も特徴的だと思います。何か意識していることはありますか?
色が記憶を思い出すスイッチとして機能しているように感じるからかもしれません。匂いや温度もダイレクトに記憶と結びついていると感じますが、その中で色は覚えているつもりでも頭の中で実はどんどん変化しているような気がします。変化しているのにも関わらずなぜか鮮明に残っているという錯覚が起こることに興味をひかれています。

Simple Use Film Camera を使って撮影する時のコツはありますか?使ってみた印象はどうですか?
カメラや写真についてまだまだ不勉強で、尚且つファインダーを覗かずに撮影している私が伝えられるようなコツはありません……。ただ、私の制作方法には非常に適していると感じています。それまでカメラは少し敷居が高いように感じていましたが、Simple Useという通り、操作方法がとてもわかりやすく、抵抗なく扱えました。
ロモグラフィーの製品で気に入っているフィルムやカメラはありますか?
Simple Use Film Cameraと、フィルムではLomoChrome Metropolisを気に入って使用しています。
今後予定しているもしくは進行中のプロジェクトはありますか?
現在は2023年9月の展示に向けて実験しています。それまでにも、いくつか発表ができればいいですが特に予定はないので、じっくりと作品に向き合う期間として過ごしています。
最後に読者に一言お願いします。
私は写真に関してド素人ですが、写真を扱うきっかけとなった友人や、今回声をかけてくださったロモグラフィーのスタッフの方から写真の魅力を教わり、とても視野が広がりました。写真をきっかけに、「よくわかっていないけどチャレンジしてみる」ことの面白さを知ったように思います。
田中さんありがとうございました!田中さんの instagram でもっと作品を見てみよう!
ロモグラフィー:Web Site / Instagram / Facebook / Twitter
2022-10-26
コメントはまだありません