LomoAmigos: ミュージックフォトグラファー 植村英里奈

アメリカと日本をまたにかけミュージックフェスやコンサート写真を撮影しているフォトグラファーの植村英里奈さん。数々の大物アーティストの撮影実績があり、Coachellaフェスなどの世界中のビッグなロックフェスティバルでの撮影経験も豊富。そんな植村さんに、昨年11月に開催されたHostess Club Weekender 出演アーティストのポートレイト撮影をロモグラフィーのカメラやレンズで挑戦していただきました。このイベントは日本のレーベルHostessが開催する、インディーロックファンにたまらないラインナップで良質な音楽を楽しめるイベントです。その舞台裏で、植村さんがLomo’Instant WideとPetzval 85 Art Lensで収めた貴重な写真を、彼女の写真家としての活動に迫るインタビューと共にお楽しみください!

植村英里奈さんのセルフポートレイトと Lomo'Instant Wide で撮影した Hostess Club Weekender 会場内の様子。

Name: 植村英里奈
Web: www.erina-uemura.com
SNS: instagram, facebook


―植村さんがミュージックフォトグラファーとして活動を始めたきっかけは?

高校時代に父親からオリンパスのフィルムカメラをプレゼントしてもらったことがきっかけで写真を撮る楽しさを知りました。
アメリカに行っては好きなアーティストのライブを趣味で撮影していましたが、フォトグラファーとしての活動することになったきっかけは、実は友達のおかげなんです。
2008年にシカゴに住むアメリカ人の友人が、私の撮ったBe Your Own Petというバンドのライブ写真をLollapaloozaフェスのライブフォトコンテストに応募して、そこで光栄にも2位を受賞することができたので、これをきっかけにプロとして活動をスタートしました。
2010年にはアメリカの報道記者VISAを取得し、2014年までNYを拠点にしていました。
今は日本を拠点としていますが、4月から11月までアメリカに滞在しフェスやライブを撮影しています。 

Lomo’Instant Wide portrait of Bloc Party and snap shot taken in Hostess Club Weekend festival site. Photo by Erina Uemura.

―長年海外を拠点に活動されていますが、文化の違いなどもあり不便なこともあったと思います。どのようにして克服し、フォトグラファーとしての海外での挑戦を楽しまれてきましたか?

今までアメリカのほとんどの州に出向き色々な会場で撮影してきました。200人クラスのフォトピットが無い会場からマディソンスクエアガーデンなどのアリーナクラスの会場まで。
フォトグラファーとしてスタートした時からフリーランスで活動をしてきたのですが、エージェントもいないので全て自分で直接アメリカ側にコンタクトを取り、やりとりしてきました。
フェスの運営側やアーティスト側に自ら撮影許可を申請するのですが、最初の頃は大きなバッググラウンドもない無名の日本人に撮影許可が出るはずもなく、自分の作品を見てもらったり、直接アーティストに撮った写真を気に入ってもらってアーティスト側からマネージメントに直接掛け合ってもらったりしていましたね。

最初の頃大変に思った事は、事前に撮影許可が出ているのにも関わらず会場の受付で名前が入っていないことがあって、当日どこに連絡を取ればいいかわからなくて焦ったことが多々ありました。
いつもPR側が忘れていたとか会場と上手くコンタクト出来ていなかったとかで最終的には撮影パスは無事にもらえるのですが、最初の頃はそれが本当に不安でした。
今は「ああまたか」って焦ることなくPRやマネージメントに連絡を取っています。(笑)

Portrait of Daughter. Photo by Erina Uemura.

―言語の問題やコミュニケーション方法など、文化的な面ではどうですか?

最初は言葉の問題もありコミュニケーションの行き違いで苦労したこともありました。でもアメリカでは自分の主張も相手に問うことも許されるので、それで状況が好転することもありますし、自分という人間を認めてもらうこともできます。そして、バッググラウンドとか国籍を気にしないで自分の作品を認めてもらうチャンスが多いです。

アメリカでは本当にたくさんのミュージックフォトグラファーが活躍していますが、彼らを通して撮影技術や編集技術も学んだりしています。世界中からアメリカに撮影に来ているフォトグラファーの友人もできました。今では彼らとフォトピットで会うだけでなく、一緒に撮影のため旅を共にしたり、彼らの拠点を撮影で訪れた際には泊めてもらったり、交流を深めています。

―ミュージックフェスティバルはライブ会場と勝手が違うので大変そうなイメージです。最初は大変だったのではないでしょうか?

そうですね。初めて撮影したアメリカのフェスは2008年のNYで開催されたAll Points Westというフェスで、RadioheadやKings Of Leonが出演していました。最初の頃はフォトピットで自分がどこにいればいいのかわからず、周りにいたフォトグラファー達に叱られたりしていました。(笑)
その翌年、Coachellaフェスに初めて参加したんです。自分が2004年から毎年参加していた大好きなフェスを撮影できるとあって舞い上がっていましたが、Coachellaフェスは規模も大きくフォトピットにいるフォトグラファーの数も多いので、そこはまさに戦場というか・・・(笑) 各々ベストショットを撮りたくてすごくエキサイトしているので、一触即発なんて現場も目の当たりにしました。そんな現場で彼らから多くのことを学びました。無名からとても有名なフォトグラファーがまでが同じピットで同じアーティストを撮影している。そんな現場に自分がいることを今でも光栄に思っています。

Event site snaps and Mystery Jets. Photo by Erina Uemura.

―海外のアーティストさんを日本に招いてイベントを行ったこともあるそうですね!詳しく教えてください!

私はインディーロックミュージックが好きなのですが、2005年頃からエレクトロミュージックにもはまり、NYやLAのクラブシーンでDJがプレイする空間を楽しんでいました。
その頃、よく行っていたのがSteve AokiがLAのシネスペースというクラブで主催していたイベントで、彼はもちろん出演していましたが他にJustice, Soulwax, DJ AMなどがプレイしていました。同じ時期にNYではブルックリンのStudio BというクラブにLCD SoundsystemのJames MurphyやEd Banger RecordsのBusy P, DJ Mehdiらがプレイするのを見に行ったり・・・。
そんな感じでアメリカのエレクトロシーンにどっぷりだった時に、マンハッタンのクラブ Don HillsでMISSHAPESが主催するイベントでJackson (今はReal Estateのドラマー)というDJと出会いました。私は彼のプレイスタイルがとても好きで、どうにか日本でも彼のプレイが見たいと思い、だったら自分で呼ぼうと思い、彼にコンタクトを取ったんです。
すると彼から実はFrankpollisというバンドをやっていてバンドとして日本に来れないかと打診され、それなら彼のバンドも呼ぼうということになりました。

Jacksonは当時DJやモデルとして有名でしたが、バンドは無名で音源すら出回ってなかったので、彼のバンドメンバーに会いライブを見るためだけにNYに飛びました。FrankpollisはJacksonがドラム担当で、彼のお兄さんのJamesがフロントマンでシンガー兼ギターでした。ちなみに彼ら兄弟は、The Piercesという姉妹デュオ(シンガーのアリソンはThe Strokesのアルバートの元ガールフレンド)の ミュージックビデオ にも出演していたりします。
彼らのプロデューサーでもあるRoger Greenawaltのスタジオに連れて行ってもらったのですが、RogerはFrankpollisは間違いなくビッグになると言っていて、Rogerの彼らへの賛辞、そして実際に見た演奏技術、音楽性から彼らを日本に呼ぶことに対する決意がより一層強まりました。

イベントは私と長年の友人でもある小林氏(Babymetalのプロデューサー)に手伝ってもらい、他4名の友人の協力もあり、東京の西麻布のWarehouse, 青山のLe Baronでの2公演をやりました。
Jacksonはバンド演奏の後、DJプレイもしてくれました。同じくフォトグラファーの米原康正氏ことヨネちゃんにもDJとして出演してもらい、これがきっかけで、DAZED and CONFUSEDマガジンにてヨネちゃんが彼らを撮影することになりました。
彼らはライブ公演、雑誌撮影の他、Appleストア渋谷でのアコースティックショウ、タワーレコード渋谷店でのトークショウも行いました。
たくさんの方に来ていただきました。

私はそのイベントにおいて、ブッキング・マネージメント・ツアマネ・ドライバー・フォトグラファーを1人でこなしました。Frankpollisや友人の協力なしでは到底実現できませんでした。
とても大変でしたが、今の私があるのはこのイベントを行った事が軸になっているし、Frankpollisのみんなとは今では私にとってかけがえのない友人になっています。
当時20歳前後で海外にも行った事がない彼らがどこの誰かも分からない私のイベントに出演する為に日本に来てくれた事にとても感謝しています。
残念ながらFrankpollisは解散してしまいましたが、彼らは現在個々で活動しています。
彼らにアメリカのフェスや日本での来日公演で再会し、撮影している今を光栄に思います。

Portrait of The Bohicas . Photo by Erina Uemura.

―Hostess Club Weekenderの舞台裏で撮影していただきましたが、このイベントの醍醐味をおしえてください。

日本のフェスで初めて撮影させていただいたのがHostess Club Weekenderでした。レコードレーベルが主宰するフェスはアメリカではよくありますが日本では珍しく、レーベル所属のアーティストが演奏を行うだけでなく、会場にはレコードやCD、グッズが販売されそこで知らなかったアーティストを発見できたりします。
出演するアーティストも有名どころから新人までバラエティに富んでいます。
会場でアーティストと触れ合えるサイン会があったりファンとの交流を大切にしてるのも魅力の一つだと思います。

―今回Hostess Club Weekenderに出演した中で、植村さんがお目当てにしていたアーティストは?

Christopher Owens です。Girls時代から好きでしたがソロになってからの曲の方が好みです。バンドメンバーに友人であるMatt Astiがいて彼に日本で再会するのも楽しみでした。彼はMGMTやConnan Mockasinでもプレイしています。
それから the Melvins 。私はいわゆるジェネレーションX世代でして、学生の頃はNirvanaをはじめグランジムーブメントに熱を上げていたのでMelvinsを見ることは私の夢の実現の一つでもありました。

Portrait of Christopher Owens . Photo by Erina Uemura.

―今回の撮影で何か印象的だった出来事はありましたか?

the Melvins を撮影させていただいた時とても緊張していたのですが、彼らはとても親切で面白く、こちらの要望にも快く答えてくれて良い撮影ができました。
高校生の頃、the Melvinsを自分が撮影するなんて想像もしなかったですし、彼らが真っ赤なハート型のベッドの上で微笑むなんて誰が想像したでしょう!笑

the Melvins by Erina Uemura.

―Petzval 85を使ってみていかがでしたでしょうか?

近年オートフォーカスに慣れていた自分にとってマニュアルフォーカスのこのレンズは最初は戸惑いましたが、すぐPetzvalの虜になりました。
単焦点のレンズが好みで50mm F1.2などのレンズをポートレートなどで使っているのですが、こちらのレンズは私の好むシャープさと鮮やかな彩度がパーフェクトに映し出されます。
そしてこのレンズの醍醐味である背景の渦巻くボケ感などユニークな所も気に入っています。
あとゴールドに輝くレンズはとても美しく持っているだけで悦に浸ることもできます。笑

Portrait of "Dornik. Photo by Erina Uemura.

―Lomo’Instant Wideでポートレイト撮影をしていただきましたが、実際に撮影で使用していかがでしたか?

インスタントフィルムが好きで、昔はポラロイド、現在はInstax Wideなどでアーティストのポートレートを撮影していました。
こちらのカメラでは多重露光長時間露光撮影が出来たり、カラーフィルターを使い自分の好みのカラーで撮影できたり、シャッターリモコンが付いているのも魅力の一つですね。
実際撮影していて、その場で写真を確認できるので、アーティストがこちらで撮影した多重露光写真やカラー写真を気に入ってくれて、カメラを購入したいと言った方もいるくらい魅力的なカメラだと思います。

―今回撮影した中で、植村さまのお気に入りの写真を教えてください。理由もお願いします!

やはりthe Melvinsの写真がお気に入りですね。あとMystery Jetsも撮影が盛り上がり良い写真が撮れました。

Portrait of Mystery Jets. Photo by Erina Uemura.

Mystery Jets – 我々が最後の取材ということもありメンバーがリラックスして撮影できました。彼らはInstant Wideがとても気に入っていてお買い上げしたいと言っていたほど。

Portrait of the Melvins. Photo by Erina Uemura.

the Melvins – Lomo’Instant Wideにて赤いカラーフィルターを2枚重ねしてよりいっそう赤感が出ているのが気にいっています。

―最後に、今後の予定を教えてください。

これまでCoachellaフェスに長年参加していましたが、今年はまだ撮影したことないフェスや都市に行ってみたいです。
オースティンのサイケデリック色が強いLevitationもその一つです。オースティンはSXSWやACLで毎年訪れていますが、小さな都市ながら町中にたくさんのライブハウスがあり、音楽が盛んでおしゃれなヴィンテージストアや、カフェ・レストランもあって大好きな街です。
それから、テネシー州ナッシュビルのBonnarooフェス、NYCのGovernors Ballフェスに参加予定です。
そしてフェスではないのですが、コロラド州にあるRed Rocks Amphiteatreという会場で撮影するのが予てからの夢なので、そこで好きなアーティストを撮影してみたいです。

―植村さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました。フリーランスで自力で活動されてきた実体験は、この記事を読む様々な読者へ勇気を与えるものだと思います。また是非ロモグラフィーのWebマガジンに登場してくださいね!


Special Thanks
Hostess Club Weekender
NUMAG

2016-02-18 #people #lomoamigo ciscoswank の記事

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