【テクニック記事】多重露光!背中から花が生える!?ウィングショットの撮り方
3 9 Share Tweet背中から翼のように花が生えたり、建物や船などがニョキニョキ生えたり...。そんな幻想的でユニークな多重写真を撮ってみませんか?今回は、最近私のお気に入りの多重テクニックの一つで、ワークショップでも大人気の「ウィングショット」について紹介いたします!
上の画像は、女性と花や人工物とを組み合わせた多重露光写真です。人物の輪郭はくっきりと、そして背中側は花などがくっきりと写り、2種類の絵が煩雑に混じり合うことなくきれいに融合しています。まるで背中から翼のように花が生えているように見え、幻想的でドラマチックなイメージとなっています。
これはちょっと難しそうに思われるかもしれませんが、実は撮り方を少し工夫すれば思ったよりも簡単に撮影することができます。
【基本設定/必要なもの】
・露出設定:-0.5~-1補正(被写体の明るさ・光の条件による)
・多重露光の方法:セルフフィルムスワップ 方式がおすすめ(効率性・成功率アップのため)
・フィルム:高感度過ぎないフィルム(ISO感度100~400程度)
・アクセサリー等:人物撮影はストロボ、レフ版、スプリッツァー、各種フィルター等自由に。黒い布など。
【撮影方法】
①人物の撮影
※順番は②の「重ねる被写体(花など)を撮る」が先でもよいです。
1. 構図はタテ位置で
人物をタテ構図で撮るのはマストではありませんが、背中から豪快に生えているように見えるためにはタテ位置のほうがおすすめ。顔の輪郭や髪の流れ、体のライン等をよく意識して構図を決めます。
2. 画面、背中側(右半分)を暗く、顔側(左半分)を明るく
この多重の一番のポイントはここです。イメージは、背中側半分(作例では左半分)をなるべく暗く、そして顔側半分(作例では右半分)をなるべく明るくはっきりと分割して撮影するということです。具体的な撮り方としては、暗いほうは、暗い建物の壁や木の幹などその場のロケーションを生かして、明るいほうは、空や白っぽい壁などを利用して撮ります。もし周囲に何もない場合はスプリッツァー等でレンズ前を暗く覆ってもいいのですが、重ねたときに自然な融合にならない可能性があります。(もしアシスタントの方などがいれば、黒い布などを人物の背後で持ってもらうのもいいでしょう。)
さらにもう一つのポイントは、頭上に暗い部分と明るい部分の境界が出てしまうので、その境界部分はフレーミングでカットしましょう。(頭を少し切ってしまうイメージ)これは重なった際に明暗の差が上にはっきり現れて人の輪郭、ひいては全体の作品イメージを損ねてしまう可能性があるからです。(撮り方によっては切らないでも大丈夫です)
3. 光の条件や服装について
撮る際の光線の条件や服装などについてですが、まず光量は順光よりも逆光や曇りのような少し弱めの光の方がおすすめです。あまり人物に光が強く当たりすぎているとコントラストが強くなりすぎて花との重なりが不自然になってしまう場合があります。(ただし撮影意図によっては順光でもOKです)服装は、なるべく暗め(黒系)のほうが重なる被写体がくっきり浮かび上がって見栄えがいいですが、これも撮影意図によっては自由です。
② 重ねる被写体(花など)を撮る
次に、花など背中から生える被写体の撮り方についてです。今回は花を撮る場合で説明します。
1. 構図は横位置で
人物とは異なり、こちらは横位置で撮るほうがうまくいきやすいです(被写体による)。撮る際は、花の上側が人物の背中側になるようにカメラの持ち手に気をつけてください。
2.視点を低くして花びらの輪郭をしっかりと浮かび上がらせる
このテクニックの成功の鍵を握るのは、背中から生えたウィング(翼)をいかに美しく見せるかということです。見栄えのよさのために、花の上側は空などでなるべく明るく抜けているのを選ぶのがまずポイント。背が低い花などは上から見下ろして撮影してしまうと地面や背後の人工物等が写ってしまい、明るいエリアが得られません。なので、なるべく低い姿勢から花を見上げるように撮影するといいでしょう。花の背後に余計なものが写り込まないように、そして花びらがスカスカになりすぎず、かつ過密になりすぎず、それぞれの花の輪郭がしっかり美しく出るベストの構図を決めます。(これが意外と難しい!)
3. 光の条件について
光線の条件は、日陰や曇天などが向いていて、なるべく下側(地面側)を暗くするのがポイント。下側は人物の輪郭側と重なる部分になるので、重なったときに人物の顔や輪郭を強い光で損ねてしまわないようにするためです。
③ 完成
下の画像が完成イメージです。成功例では、人物の輪郭も黄色い花も自然に融合して2種類の絵がくっきりと浮かび上がり、背中側は羽が生えたように花がまっすぐ後ろに伸びています。失敗例は、花の背後に暗い山と明るい空が混在しているせいで、翼が生えるべき背中側の輪郭を損ねてしまっています。ということで、それぞれの撮影で明るくすべきところはしっかり明るく、そして暗くするべきところはしっかり暗くするということが今回のテクニックになっています。
最後に、私のウィングショットの作例をコメントと共に紹介します。
Enjoy your multiple-wingshots!!
背中からひまわりが生えている作例。建物内での撮影のため明るい壁と暗い壁の境目を見つけてそこに立ってもらい撮影。ひまわりは横位置で撮影し地面側はなるべく暗めに。
背中からビルが生えた作例。背後はバス停留所の壁の明暗を利用。ビル群は横位置で撮り下側は日陰になった暗めの海を配置。
人物が横構図での作例。背中側は木の枝や葉で暗部を確保。コスモスはタテ構図で見上げて撮りなるべく下側は暗めに。
モノクロでの作例。背中側は公園内の木々で暗くした。ひまわりは横位置で撮影し地面側は暗めになるよう反逆光で。頭の上まで写ってるけど違和感なくうまくいった例。
人物が横位置での作例。背中側は公園内の木々を利用。梅の花を横位置で撮り弧を描くように背中側に生やした。人物は完全シルエットのため輪郭のみ現れイメージ的に。
以上、ウィングショットの撮り方でした。ちょっと難しそう?最初はちょっと難しいかもしれませんが慣れると簡単に撮影できるようになりますよ。ぜひ皆さんの多重露光テクニックのレパートリーに、このウィングショットを加えてみてください。これまでのポートレート多重写真の表現に新たな魅力が加わることまちがいなしです!
Author: hodachrome / 山本穂高
岐阜県出身のカメラマン。2007年にLOMO LC-Aと出逢い、その魅力の虜となる。世界のロモグラファー・フォトグラファー達と研鑽を重ねながら、国内外を問わず写真展への参加、写真集・グッズ販売、写真講座・ワークショップ等、幅広く活動する日々を送る。
ロモグラフィージャパン:Web Site / Instagram / Facebook / Twitter
2021-03-24 hodachrome の記事
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